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カテゴリー「文化・芸術」の記事

2019年8月24日 (土)

八月納涼歌舞伎 新版雪之丞変化

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夫が息子と出かけてくれることになったのを幸い、久しぶりに歌舞伎座の一幕見席で、納涼歌舞伎を鑑賞することが出来ました。

三部制の今月、どの部も幕見が大人気とのうわさで、発売の一時間前には列についたのですが、私の後3人目の方で係の方から「お立見です」との宣告が…

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ギリギリセーフで無事に整理券とチケットを入手し、地下の木挽町広場でコーヒーフロート。黒糖アイスが並んだの後の体に染み渡りました。

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幕間のおやつは、歌舞伎座の「ほうおう」特製のフルーツサンド。夕食代りにも十分は食べ応えでした。

玉三郎、中車、そして今月は朝から三部共出ずっぱりの七之助、メインの役者はこの三名のみで上演された「新版 雪之丞変化」。

幕開けの劇中劇で、いきなり今月の一部で上演している「伽羅先代萩」の場面が演じられることに始まり、「先輩役者」役の七之助が「駆け出し役者」役の玉三郎を指導しながら、あれやこれや女形の名場面をなぞってみせるくだりでは、客席もニヤニヤ、クスクス。
花道から楽屋への実況生中継もある、斬新な映像とのコラボレーションは、4階の幕見席からはスクリーンが見切れてしまって満喫することは出来なかったのですが、現実の歌舞伎座と舞台の世界が交錯する、かなり斬新な試み。

長年の玉三郎ファンとしては、シャンソンを歌おうが何をしようが、どうぞお好きになさってくださいという思いしかないので、今回の様々な趣向も本当に楽しませてもらいました。

そして何より、親の仇討という本懐を遂げたその先に、自分はどう生きていけばよいのか、と迷った末の雪之丞が、女形役者としての道を究めてお客様に楽しんでいただこう、一筋の道を花の散るまで…と決意を吐露する場面では、お役を超越した心情の吐露を感じてじんとしました。

華やかな、ひたすら華やかな「元禄花見踊」で締めくくられた舞台、真夏の夜の夢と呼ぶにふさわしいひとときを過ごさせてもらいました。

2019年7月27日 (土)

氷艶ー月光かりの如くー

一昨年、歌舞伎とアイスショーのコラボレーションを見事なエンターテインメントに仕上げてみせた「氷艶2007 破沙羅」。(鑑賞時のブログはこちら)。

事前の予想を遥かに上回る濃密な内容は、時を経た今も忘れられず…
第二弾の制作が発表された時から、開催を心待ちにしていました。

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会場が横浜アリーナだったため、みなとみらいや横浜駅周辺の商業施設ではキャストの等身大パネルが飾られたりして、開演日が近づくにつれ気分が盛り上がっていました。

今度は、宮本亜門演出のミュージカル?題材は源氏物語?どうなることやらまったく想像がつかず。
座長格となる髙橋大輔さんの「自分は光源氏をやるには色々濃すぎると思う」という記者会見での発言に、確かにそうだ…と深くうなづき(笑)
前回も、客席に座る前は何が何やらよくわかっていなかったのだから、そして終演時には「これを観ない選択肢はあり得なかった!」という気持ちになっていたのだから…と、期待だけ心に詰め込んで、横浜アリーナに向かいました。

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前回の氷艶は、歌舞伎役者の皆さんが本当にスケートを頑張ってる、という点にとにかく胸打たれたのですが、今回は何と言ってもスケーターが、本業以外のところでがんばっている点にビックリ。
台詞を言う、演技をする、そして歌う!
特に出ずっぱりだった光源氏の大ちゃん、私の眼は贔屓のひき倒しで曇りまくっているので正常な判断ではないことを自覚しつつも、思いのほかちゃんと出来てた…と、感動するより安堵が先に立つファン心理(笑)

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平安貴族の雅な世界を描いているはずなのに、何度も何度も剣をふり回す立ち回りが見せ場になっている時点でもう、トンでも源氏物語、というのは明らかで、細かいツッコミはなしね、という感じ。
それでも、あのステファン・ランビエール様が烏帽子に装束で現れただけで「リアル"あさきゆめみし"」!とうっとりだったし、スケートリンクでしか表現できないプロジェクションマッピングの妙(特に歌合せの場面の、筆文字とスケートの織りなす表現の美しさは忘れられない)など、「氷艶」ならではの世界を堪能しました。

ミュージカルは基本的に、「ストーリー」を描かなければいけない以上、起承転結が必要で、そもそもあらすじなど無視で、見せ場と見せ場が排気でくっついてしまう歌舞伎とは大きく違う。
どちらがアイスショーの性質にあっているかといえば、個人的には後者かな、と思ったのも事実です。

主役を張る大ちゃんの持ち味は、圧倒的に「陽」よりは「陰」のテイストだから、クライマックスは彼の「慟哭の舞」であって当然だし、流石のスケーティングで目頭が熱くなりました。
ただ、そこへ持っていくがために、終演後「…そう言えば、誰1人幸せにならないお話だったよね…」と気づく羽目に(笑)

観客席の私は十二分に幸せでしたよ!後日、浅田真央ちゃんも同じ日に観劇していたことがわかって興奮を新たにしました!
(9月1日、正午からBS日テレで放映されます)

2019年6月 4日 (火)

クリムト展

2019年の春、東京はちょっとしたクリムト祭り。都内で三つの関連する美術展が開催される中、最も画家本人の作品を中心に取り上げている「クリムト展ーウィーンと日本1900」を、上野の東京都美術館で鑑賞してきました。

没後100年を記念した展覧会で、初期の作品から、代表作を数々生んだ「黄金様式」の時代まで、油絵、素描の数々が展示されていました。コレクションしていた日本の古美術品や、ウィーンの分離派会館の壁画「ベートーヴェン・フリーズ」の複製の展示も。

過去最大級!と大々的に宣伝されていましたが、展示作品の数は都美術館の規模に見合った程よいボリュームで、朝からじっくりとまわって(幸い、混雑もそれほどでもなかった)お昼前には鑑賞を終えるという、中年の足腰に優しい(笑)内容でした。
初期の写実的な肖像画がハッとするほど魅力的だったり、一本の線が迷いなく決まっていて、この人本当に絵が上手なんだな…と当たり前のことを思い知らされるデッサンの数々も、見応えがありました。

 この物語を映画化した、ヘレン・ミレンの映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」も、良かったなぁ…

ウィーンを訪れた際、ベルヴェデーレ宮殿のオーストリア・ギャラリーで、「接吻」や「ユディトⅠ」が飾られたクリムトの部屋に足を踏み入れた瞬間の、「わぁ…」とため息まじりの歓声が小さく漏れてしまったあの感動は、十数年を経た今でも忘れられない記憶です。

点描の筆運びの立体感と入り混じって、黄金のきらめきが、色彩のうねりが、空気まで輝かせている…という驚きは、実物の作品と対面したからこそのもので、冬のウィーンの思い出も甦りました。
わざわざ飛行機に乗って観にいかなくても、向こうから近くに来てくれる、東京の有難さを思った次第。

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最近はどこの展覧会でもお約束になった感がある、会場外の撮影コーナー。「女の三世代」を背景に、自分が箔細工のフレームに入って記念撮影が出来るという趣向ですが、ちょっとやってみる勇気が出なかったです…

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ランチは東京文化会館の2階にある精養軒に行きました。
ハンバーグもミックスフライも美味しそうだったけれど、悩んだ末に、精養軒がオリジナルで発明した洋食(?)「チャップスイ」を選択。ざっくり言えばコンソメベースの中華丼、という感じで、文明開化の味がする気もする(美味しかったです)。

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デザートはいちごのモンブラン。場所柄か、お皿が五線譜や音符をあしらったとても美しい絵柄でした。

この日、一緒に出かけた同級生とは半年ぶりの再会。お皿が空になった後も近況報告が止まらず、気づけばクリムト展の2倍以上の時間を精養軒で過していたという(笑)

2019年5月18日 (土)

東寺展

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「特別展 国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」というのが、展覧会の正式名称だそうです。ともかく、巷ではかなりの話題になっている東寺展。

弘法大師、空海が真言密教の道場としてプロデュースした東寺。かなり昔、京都観光の折に、五重塔の心柱が特別公開されているのを拝観できたことが印象的で、京都の中でも思い入れのある場所の一つです。

講堂の立体曼荼羅から、15体と史上最多の仏像が観覧出来るとあって連日大賑わいと聞いていました。金・土曜は21時まで開館しているということで、混雑を避けて夕方から会場の東京国立博物館へ行くことに。

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上野公園では新潟県の観光フェアを開催中。名前も知らぬゆるキャラさんにとりあえず懐いていく息子…(笑)

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公園内を歩き、トーハクからやや奥まったところにある国際子ども図書館へ行きました。元は明治の末に建てられた帝国図書館。レンガ造りの建物にある国立の児童書専門図書館です。

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階段の吹き抜け部もこの通り、鏝絵の漆喰装飾や手すりの細工の美しいこと。以前から一度来てみたいと思っていましたが、想像以上に素敵な場所でした。

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図書館にいれば時間を忘れるタイプの息子。閉館の17時まで、次々に色々な蔵書を読み漁っていましたが、読書の際その姿勢ってどうなの…

空の色が変わった頃に移動して、入場待ち時間ゼロで東京国立博物館平成館へ。

息子がいただいた小中学生向けのジュニアガイドには、「こころの宇宙にとびこもう!」という秀逸なコピーが書いてありました。
インドから中国を経て日本に伝わった、奥深い密教の教えをこのように視覚化してみせた、1300年前の天才の頭脳にひれ伏したい思い。
空海が実際に持ち帰った法具をはじめ、貴重な国宝を次から次へと拝見できました。音声ガイドの佐々木蔵之介さんのナレーションも、美声と穏やかな語り口でうっとり聞き惚れるレベル。

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立体曼荼羅の仏像群のうち、帝釈天騎象像は撮影が許可されていて人だかりができていました。
さまざまに形を変えて人々を救う仏のうち、「天」は邪悪なものから守ってくれるガードマンの役割だとか。凛々しいお姿は確かにその務めにふさわしい。

 

個人的には光瀬龍原作のこの漫画を激しく読み返したくなりました…

大人達がスマホを掲げて撮影に夢中なのを見て、自分も撮りたい!とせがまれ、やむを得ず息子に撮影させた画像がこれ。

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その2.それなりにアーティスティック?

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2才の夏に京都を訪れて、大汗かいて東寺を歩いたこと、もう何も覚えていないんだろうなあ…

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2019年4月21日 (日)

毛皮のマリー

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新国立劇場にて、学生時代からの友人たちと、美輪明宏演出・主演の舞台「毛皮のマリー」を鑑賞してきました。

後援にTBSラジオが入っていることもあり、ラジオCMで「さーあさあお立ち会い!」と美輪サマの口上がくり返し流れてきていたこの公演。
これまでに何度も鑑賞している舞台で、演出も共演者もその都度違い、それでも一貫して変わらないのは、マリーを演じる美輪サマ、そして「醜女のマリー」という重要なサブキャラクターを演じる麿赤児さんの圧倒的な存在感です。
初めにこの芝居に出会ったのは、まだ私が二十代だった頃でした。
それからこんなにも長い月日が流れたのに、このお二人の佇まいの凄み、表現の力強さにまったく衰えや翳りが見られなかったことに心の底から感動しました。

ちなみに私が最も強烈に覚えているバージョンは、クライマックスの場面転換に贅沢な舞台装置を使い、ミッチー・及川光博さんを息子役に迎えた青山劇場での公演です。

今回は、これまで冒頭とエンディングに流れていたシャンソン「毛皮のマリー」はなく、代わりに津軽三味線の茫漠とした響きが舞台を多い、寺山修司の映画を思い出させるアイコンが舞台を埋める演出に、原作者寺山への強い思いを感じました。自分に宛ててこんな凄いお芝居を遺していった人ですものねぇ。

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劇場に足を運んだのは千秋楽。カーテンコール、舞台から客席の隅々まで愛を贈る美輪サマの慈悲深い表情に心打たれてロビーに出たら、さっきまで会場を埋めていた花が完膚なきまでに片付けられていたのに呆然(涙)せ、世知辛い…

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利休忌の茶会から直行した友人と。私は伊勢木綿に下駄でカジュアルに。刺繍半襟で華やかな気分を演出したつもり。

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2019年4月 6日 (土)

奇想の系譜展

春休みの終盤が風邪の療養で潰れて、お花見もままならなかったことを取り返すべく、入学式の翌日に上野へ出かけてきました。

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ちょうど上野公園は桜の盛り。午後の遅い時間から出かけたこともあって、昼の部と夜の部のすき間にもぐりこんだか、花見客の混雑もほどほど。
満開の花の下をゆっくりと、上を向いて歩くことが出来ました。

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この日のお目当ては、会期最終日を翌日に控えた「奇想の系譜展」でした。
現在の日本美術史の評価、価値基準を決定的に変えた分水嶺ともいえる、辻惟雄の著書「奇想の系譜」
日本人に忘れ去られていた伊藤若冲や曽我蕭白らに光をあてて、アイドル的人気者にまで押し上げるきっかけを作ったこの本、わが家にも文庫版がありますが、図版は白黒もちろん文庫サイズ…
紹介されている名だたる絵画の実物が拝めるとあれば、この貴重な機会を逃すのはもったいない、と思いました。

「江戸絵画ミラクルワールド」というサブタイトルがついていましたが、「奇想の系譜」で取り上げられている岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の6名の他に、白隠慧鶴、鈴木基一の作品も取り上げられ、いずれ劣らぬ画力と、「昔の人」という先入観をぶち壊してくる発想のパンクな奇抜さに圧倒されました。
今の時代のポスタービジュアルに通じるようなデザイン性とか、まるでマンガみたいな単純化されて楽しい表現とか。
「山中常盤物語絵巻」の、平面の紙に描かれているのに、ずっしりと重たい貴金属の宝物みたいに見える質感(つまりはそれだけ濃密な筆致で細部まで描き込まれているということ)など、実物を観られたからこそ実感できたことも多々あり、この時間に感謝したい、と心から思いました。

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Eテレ「びじゅチューン」のおかげで、国芳の「宮本武蔵の鯨退治」が見たい!と言っていた息子も、動物や鬼や妖怪が続々出てくる展示内容を楽しんでいました。

2019年2月19日 (火)

二月大歌舞伎と大人のいちご狩り

お友達と十二月の阿古屋以来の歌舞伎座へ、幕見席で夜の部の観劇を楽しんできました。

当日販売しかない幕見席のチケットが売り出される時間まで、大手町のアマン東京にある「カフェbyアマン」でティータイムを過ごしました。
丸の内のビル街の中というのを忘れそうになる、緑に囲まれた空間。隠れ家感があり過ぎて、中に入るのに迷いに迷ったのは内緒(笑)

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季節限定「苺づくしのフォレデセール」。
タルトやミルフィーユなど一口サイズのケーキ類に、ミックスベリーのスープや、メレンゲやアイスののったコンポート、キャラメルをディップしていただく苺など、飾り棚のような独特なトレイに赤が映えるセッティング。
ラグジュアリーな「大人のいちご狩り」という感じでございます。

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さらに、選べるクレープがついています。「旬のいちごのクレープ」を選んだら、なんとクレープ生地にいちごが練り込まれて、バラの花の形になって出てきたのは嬉しい驚きでした。
見るなり「ローストビーフかと思った…」と口走ってしまったのは、これも内緒(笑)

あいにくの空模様と冷え込みで、歩いて移動するのはあきらめ丸の内線で銀座へ。
天候のせいか、拍子抜けするほど幕見席のチケット売り場は人が少なくて、難なく二部と三部のチケットを購入することが出来ました。

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開演までの時間を、B1Fの木挽町広場をぶらぶら見てまわって過ごしました。年末はクリスマスツリーが飾ってあった場所には、立派な七段飾りの雛人形が。

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当月の企画として、楽屋の化粧前が再現され、実際に座って写真撮影することも自由…というコーナーが出来ていました。

開場時間に合わせて4階ロビーへ移動、整理番号順に客席へ。舞台中央の前列、見やすい席で鑑賞したのは、長唄舞踊の「當年祝春駒」と「名月八幡祭」。

今月は、故・尾上辰之助丈の三十三回忌追善ということで、孫にあたる尾上左近君が舞踊では見事に曽我五郎を表現していました。

そして「名月八幡祭」では、三十数年前に辰之助とこの演目で共演した仁左衛門サマ玉三郎サマの人間国宝カップルが、時を経て息子の尾上松緑丈と演じるというのが見どころ。

お話自体は、越後から江戸に出てきた真面目なちりめん屋の行商人が、深川芸者に惚れてしまったがゆえに、取返しのつかないレベルで人生を踏み外す哀しい展開…

…なのですが、観ているこちらとしては、芸者美代吉を演じる玉サマと、彼女とくされ縁でつながる情夫の仁左サマの艶っぽさにうっとりでした。
目先の快楽のことしか考えられない二人の浅薄さ、ワルさ、どうしようもなさもひっくるめて、ずっと観ていたいと思わせられるだだ漏れの魅力。こんなにも「いいぞもっとやれ」というフレーズが似合うイチャイチャぶりを、私は他に知らない。

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熱にうかされたようにのぼせあがった身体に、二月の夜気はピリッと鋭く…現実に引き戻されながらも、帰りの道中ではずっと、目に焼き付けた麗しい二人の姿を反芻しておりました。

2018年12月25日 (火)

十二月大歌舞伎~二つの阿古屋

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今年もたくさんの楽しい時間を過ごさせてもらった歌舞伎座。
去年に引き続き、今年も玉三郎丈に年納めの夢を見せていただこう、と夜の部を観てきました。

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今月の公演は変則で、壇浦兜軍記で玉三郎様が阿古屋を務めるAプロと、若手女形の梅枝さん、児太郎さんが日替わりで阿古屋に挑戦するBプロが、ほぼ2日おきに上演されていました。

長い間、「現在は玉三郎しか演じることが出来ない演目」とされてきた阿古屋琴責めの段。
映像では何度も目にしてきましたが、やっと今回、Aプロを鑑賞して念願がかないました。

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しかも奮発した1等席、生まれて初めて最前列で舞台にかじりつくことに…ポジション的に、ここは阿古屋が座る場所のすぐ近く…!と、定式幕が開く前から心臓が早鐘。

琴、三味線、胡弓を実際に演奏しながら、行方知れずの恋人を思う心情を表現する、という女形の大役。
詮議の場に引きずり出されて拷問されかける、というシチュエーションがすでに緊迫感に満ちているのですが、文字通りのかぶりつきで観てみてよくわかったことは、難役に挑む玉三郎丈を支える舞台上の人々にも、並々ならぬ気迫と緊張が張りつめていること。

客席の大勢の観客の視線ばかりか、共演の役者も、伴奏や長唄を合わせる奏者も、阿古屋の一挙手一投足に意識のすべてを向けている。
そんな重圧、並の神経では到底受け止められないと思うのですが、そこは女形の最高峰に立った方。琴や三味線の調べから、揺れる女心が伝わってくるようで…

「胡弓弾け、胡弓弾け」と命じられる頃には、いつしか堂々たる傾城の風格と誇りを取り戻し、水を打ったように静まり返る劇場内に咽び泣くギターソロ、じゃなかった、胡弓ソロが響き渡る。
ファン歴四半世紀以上、最接近遭遇した玉三郎丈は、さすがに重ねた年令を感じるところはありました…が、それ以上に、重ねてこられた修練の重み、厚み、尊さに胸打たれて、幕切れでは拍手しながら涙をこらえきれませんでした。

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すっかり歌舞伎座に馴染んだ中車さんの持ち味が活きた二人芝居「あんまと泥棒」、梅枝&児太郎の溌溂とかわいらしい「二人藤娘」を観て、夢見心地のまま帰路につきました。

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歌舞伎座タワー地下の木挽町広場では、金の星の代わりに鳳凰を頂いたツリーがお目見得。ちりめん細工のような和柄のオーナメントが凝っています。

後日、歌舞伎見物の初心に返って…という訳ではないですが、久しぶりに幕見席のチケットを求める行列に1時間並び、もう一度夜の部を鑑賞しました。

お目当ては、玉三郎様の指導を受けて大きな役に挑戦する、中村梅枝さんの阿古屋。玉三郎自身は、赤面の悪役である岩永左衛門を演じるというレアな配役も観ておきたくて。

4階の幕見席から観る舞台の図は、最前列とはもちろん異なる光景でしたが、歌舞伎座の良いところは、だからといって舞台の魅力が削がれるものではないこと。
むしろ引きの構図で観ることによって、計算された見せ場が一番美しく、一幅の絵そのものになる利点もあります。

Aプロの「二人藤娘」では、間近で顔中が汗でぐっしょりだったのが印象に残った梅枝さん。
玉三郎様の風格をひたすら崇めていた阿古屋とは、ちょっと違った心持ちがこちら側にはあったのですが…
なかなかどうして、教わったことを誠実になぞって努力されたことが、立派に舞台上で華開いていました。古風な風情のある梅枝さんに傾城の鬘や打掛は本当によく映えていて…

拝見した日が、梅枝さんにとっては阿古屋の楽日。でもこれは終りではなくて始まり、満場の拍手にはそんな期待もたくさん込められていたと思います。私ももちろんその思いでした。

2018年12月 6日 (木)

文楽鑑賞教室

気温がぐっと下がって冷たい雨がそぼ降る中を、久しぶりの国立劇場へ。

大人気で通常公演以上にチケット激戦の、文楽鑑賞教室をやっと観に行くことが出来ました。

観劇前のランチは、これまた長年行きたいと思っていた麹町のドーカンへ。

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平日の日中しか開いていないお店で、なかなか来られる機会がなく…次のチャンスもいつかはわからない、とあって、悩んだ末に「具だくさんスープセット」を注文しました。
しょうがをきかせた野菜たっぷりのスープが、滋味たっぷり。チキンのクリーム煮もやさしいお味で美味しかった!

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セットのデザートを変更して、プラムの赤ワイン煮とクリームチーズをのせたワッフルをお願いしました。
ドーカンのことを知ったのは、週刊文春のグラフでこのメニューが紹介されていたのがきっかけ。それも十数年前のこと(!)我ながら執念深い…
長年の片思いが実ったひととき、まさに「口福(こうふく)」でした。

ランチをご一緒した友達と別れて劇場へ。公演の趣旨が趣旨だけに、ふだんの文楽公演では見かけない制服姿の若者が客席を埋めていて、何だか新鮮でした。

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演目は、陽気な舞踊の「団子売」と、歌舞伎でも名高い「菅原伝授手習鑑」。合間に「文楽の魅力」と題された解説コーナーをはさみます。

解説付きの文楽鑑賞はこれまで何度も経験していますが、これまで伺ったレクチャーは人形の仕組みや遣い方についてのものが殆どでした。

なので、本当の舞台上で、浄瑠璃や三味線の語り分け、弾き分けの魅力を、技芸員さんの実演で教えてもらえたのは貴重でした。
改めてその技量の素晴らしさ(そして、透けて見える修練の尊さ)を実感することが出来ました。

そして実際の演目ですが、今回、前から4列目という席だったため、この頃肩と首の調子が悪い私、あまり頭を動かすことが出来ず…
いつもなら、床の太夫と三味線の姿も舞台と同様に視野に入れて楽しむのですが、右側を向くのが少々辛くて。必然的にがっつり、お人形たちを見据えて鑑賞しました。
(寺入りの段は、豊竹咲寿太夫さんの語り、敦澤友之助さんの三味線と、見目麗しい若手の競演で、もっと目に焼き付けたかったところだったのが悔やまれる)

自分が男児の母親になってから、大きな義のために我が子を犠牲にする、寺子屋のような演目の観方はそれまでとは同じでなくなってしまって。何度も目にしているのにやっぱり涙が抑えきれず。

今回、舞台に近いところでのめり込んで観察していたおかげで、場の中心になって動いている登場人物の脇で、じっと首を垂れている人形にも引き寄せられました。
辛い心情を思いやって、心から同情を寄せ、共に胸の内で泣いている…
その気持ちがひしひしと伝わって来たのが、殊更に印象的でした。
その間、人形遣いはまったく人形を動かしてはいないのに。

魔法って本当に目にすることが出来るんだ。文楽を観るといつも思わされることです。
鑑賞教室に「連れてこられた」若い人たちの中で、少しでも「また観たい」と思ってくれる人がいたらいいなあ、と切に願います。

2018年11月10日 (土)

日本美術展覧会

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「改組 新 第5回 日本美術展覧会」というのが正式名称ですが、「日展」という呼称の方が、よほど通りが良いかと思います。
本年度の日展に、昨年に引き続き義父の油彩画が入選したということで、めでたいめでたい…と親族一同で鑑賞してきました。

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会場は六本木の国立新美術館。近くで見つけたお店のランチタイムに滑り込み…本来おつまみメニューと思われる渦巻きソーセージに、息子はご満悦。

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館内は撮影可、彫刻作品の一部については、視覚障害者が直に触れて鑑賞することも出来るとのこと。
他にも日本画や工芸美術等、普段はなかなか目にする機会がない分野の芸術にじっくりと触れることが出来ました。

美大で油絵を学んだ後、一般企業に就職する道を選んだ義父が、様々な経緯の末に再び絵筆を取って、日展入選を果たしたのは還暦を過ぎてからのことでした。

その後、脳出血で倒れ身体が不自由になりながらも、利き手は無事だったということで、再びこの日展の出品作家になることが義父の大きな目標だったのです。
昨年、その夢が叶った時は、義父の努力はもちろんですが、支え続けた義母の苦労が報われたことが本当に嬉しかったです。

10月から始まったNHKの朝ドラ「まんぷく」に今、かなりはまっているのですが、要潤が演じている、どんな状況にあっても絵描きであることをやめられない主人公の義兄とその一家の描写は、時折身につまされるところがあります。

膨大な作品群を鑑賞しながら、1つ1つにそれが完成するまでの長い時間とドラマがあるのであろうなあ…と、思いを馳せた次第です。

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秋の日は釣瓶落とし、という言葉を実感する季節の到来。イルミネーションの季節も目の前。

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