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カテゴリー「文化・芸術」の記事

2017年8月 8日 (火)

大相撲夏巡業~渋谷青山学院場所

空前のブームで、国技館のチケットがなかなか取れない大相撲。
本場所が無理なら巡業に行けばいいじゃない…とアントワネット様のようなことをひらめいて、8月8日、家族で「渋谷青山学院場所」を見に行ってきました。

風向きのせいでのぼりの文字が裏返ってしまい痛恨の写真…

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青山学院記念館(体育館)に向かうと、R246には寄せ太鼓の音色が響いており、否応なく気持が高揚します。
学食も券売機はクローズで、ちゃんこのついた特別メニューのみ。
その上パーテーションで区切られた一角が力士用の食事処になっていて、関取がトレイに並んだランチを召し上がっている様子を窓越しにチラ見出来てしまうなど、蔦のからまるチャペルで有名なキャンパスが、この日ばかりは相撲一色、でした。

170808sumo4チケットと併せて申し込んだ特製弁当の中身はこんな感じ。コロンバン製の記念クッキーは日付入りの特製缶に入っていました。

巡業は、朝から行けば幕下の稽古と並行して行われる関取との握手会なども参加できると聞いて通勤ラッシュに揉まれて出かけました。
その甲斐があり、握手させていただいたり(その手の平の分厚いことといったら…)息子を抱き上げていただいたり、本場所では有り得ないほど身近に触れ合うことが出来て、有頂天の時間を過ごしました。

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お相撲さんは、格の上下に関わらず皆さん子どもに温かく、「気は優しくて力持ち」という言葉がぴったり。大きな身体に圧倒されながら(…トトロ感、ハンパない!)と失礼な思いが頭をよぎる(笑)

しかし、土俵の上ではその身一つで、目の前の相手を倒すことに賭けているのが力士。
そのことがひしひしと伝わって来たのが、取組み前の激しい稽古でした。

黒いまわしをつけた幕下の稽古から、白いまわしの関取へと順を追って猛稽古が続けられます。
終盤、息を吞むほどの迫力で延々と続けられたのが、若手の注目力士、阿武咲に白鵬が胸を貸したぶつかり稽古。
跳ね返されて、土俵に転がる阿武咲を足蹴にしながら、鼓舞するように観客の拍手をうながし、何度もなんども向かって来させる横綱のラスボスぶりと言ったら…

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稽古が進むにつれ、疲れて朦朧としてきたのか、すぐには立ち上がれない阿武咲の髷を、片手でつかんで引っ張り上げるのには啞然としてしまいました。
全身が土俵の砂にまみれ、しまいには髷もほどけてざんばら髪になった阿武咲…
その姿は、立派なお相撲さんから異形の何かに変身してしまったようで。

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(↑こちらの写真は日本相撲協会のTwitterから拝借)
テレビで見る土俵の数分、数十秒の陰に、ここまで厳しい時間の積み重ねがあったか…と、強烈な印象が残りました。

稽古がお昼で終わった後、土俵上ではちびっ子相撲やら、相撲甚句、初切、呼び出しさんによる櫓太鼓の打ち分け実演など、巡業ではお約束のあれこれが披露されました。
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正直なところ、取組そのものは「怪我のないようご安全に」という空気が感じられないでもなかったですが、土俵入りも三役揃い踏みも弓取り式も見る事が出来て、感激でした。
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嘉風―琴奨菊の取組。いわゆる「琴バウアー」もこの目で見られました(イナバウアーは体を反らすことじゃなくて、足の形のことなんだけどね…と一言付け加えずにはいられませんが)。

相撲甚句の終盤に
「我々が発った後も、お家繁盛、街繁盛、悪い病が流行りませんよう…」
という意の一節がありました。
初めて見た巡業は、大相撲はやっぱり、勧進興行という起源に根ざしていることを実感させられるものでもありました。

かつて大騒ぎになった不祥事の数々も、そういう視点から捉えると腑に落ちるし、そんなことまるでなかったかのように人気が再沸騰していることも、そりゃそうだよ、やっぱり相撲って楽しいもの…と、深く納得した次第。 

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一期一会の移動遊園地のような祝祭空間。
弓取り式を見届けて帰路につくと、チャペルのあるキャンパスの中庭ではすでに、次の巡業先へ向けての移動準備が着々と進められ、幕下のお相撲さんたちが忙しく立ち働いておられました。

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朝のうちは、威圧されたかモジモジしてしまい、逆に関取から大きな手で頬を撫でてもらっていた息子(せっかくの心遣いも“痛かった…”とオカンムリ)。
帰り道ではすっかり気が大きくなって、駅へ向かう道で浴衣姿を見つけると、駆け寄って自分から握手を求めるほどになっていました。

ただよう鬢付け油の香りは「おすもうさんはくすぐったいにおいがする」とのことでした。貴重な体験、ずっと覚えてくれていたらいいと思います。

2017年6月 3日 (土)

大英自然史博物館展

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この春の上野界隈は、観に行きたい展覧会があれもこれもとあったのですが、足を運べたのは「バベルの塔展」とこちら、国立科学博物館の「大英自然史博物館展」。

初来日という始祖鳥の化石をはじめ、巨鳥モアの骨格標本やらエジプトで見つかったという猫のミイラやら、貴重な展示の数々に、世界は不思議に満ちている…とワクワクしながら鑑賞しました。

170603ueno2館内の展示物はほとんどが撮影OKでした。
息子には、学術標本よりはモニターに映し出されていたCGアニメ(夜、誰もいない大英博物館の中を、生き返ったモアや魚竜が動き回るという、よく出来た短編)がウケており、おかげで大人はじっくり好奇心を満たすことが出来ました。

常設展にも興味津々だったのですが、さすがに4歳児の気力体力に限界が来て、「地球館」のみ鑑賞。しかし、巨大空間にぎっしり佇む剥製たちを観られただけでも十分、満足でした。

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このコレクション、元々は個人のものだった、というのが一番のびっくりポイントだったりする…人間の探求心ってすごいなあ。

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二階建てになっていて、足元の床から剥製さんを見下ろすことも出来ます。前から一度来たいと思っていたスポット、次はゆっくり常設展を観て回ろう…と思いました。

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この少し前、幼稚園の遠足で訪れた「八景島シーパラダイス」。剥製も標本も凄いけど、生き物の命が躍動する様子もやっぱり、感動的です。

2017年5月21日 (日)

氷艶2017「破沙羅」

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歌舞伎とフィギュアスケートが融合するという「氷艶」公演のニュースを初めて目にした時、自分にとっての大好物2つがまさかの融合!という現実に、うれしさよりも驚きが先行してしまった私。

最初、なんとなく頭の中に思い描いたのは、リンクの中に舞台を作って、歌舞伎舞踊とスケートを同時にやったりするのかな…というイメージ。
チケットは早々に入手したものの、神話の世界と歌舞伎の登場人物が一つの世界で戦いを繰り広げる、というあらすじもまったくピンと来ず…
「“和”っぽい感じにまとめてみました~」的な、中途半端なアイスショーだったらイタイなぁ、という心配が拭えませんでした。

それが、どうやら前代未聞の何かを目にすることになるかもしれない、という予感に変わったのは、公演一ヶ月前くらい。
SNS等から伝わってくる情報で「歌舞伎側の出演者が、深夜のリンクでスケートの練習に励んでいる」ということを知ってからです。

期待に胸を膨らませながら、迎えた当日。昼の部を観るのに先立ち、原宿のレフェクトワールでブランチをいただきました。

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京都のル・プチメック運営のお店。絶品のあんトーストでしっかり腹ごしらえをして、いざ代々木第一体育館へ!

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ジリジリと夏のような日射しが照りつける中、袷の訪問着に身を包んだご一行と、防寒具を入れた大きなバッグを持ち歩く人々…
会場周辺からしてすでに「歌舞伎×アイスショー」の融合そのものだったという(笑)

そして、リンクサイドに座った私の目の前に、その後繰り広げられた光景は…
確かにたしかに、「想像も限界も、あざやかに 超えていく」のキャッチコピーにウソはありませんでした。
氷上を見つめていた視線の遥か上、空中から荒川さんが浮かんで登場したオープニングから、度肝を抜かれっぱなし、血が沸き立ちっぱなし!

スケートファンのツボを押さえた配役、演出にも大満足でしたが(やっぱり大ちゃんのペアのお相手はアッコちゃんが最強、とか)、特筆すべきはやはり、自分達の芸をがっつりアイスショーの世界に寄せてきた歌舞伎役者の奮闘ぶりで…

スケート靴で六方、踏むの?踏んじゃうの?ホントにやったー!
スケート靴で毛振り、振るの?振っちゃうの?ホントにやったー!

…一事が万事この調子。
易々と、こちらの拵えた限界を上回ってくる演者さん達を観ていて、どれほどの努力が費やされたのか…(しかも公演はたったの三日間…)と、心底感動いたしました。

現役時代にジャンプが不得手で、成績は伸ばせなかったスケーターの面々が、伸び伸びといきいきと、氷上で役を表現している姿に、ここには回転不足もエッジエラーも関係ないよね、思いっきり楽しく滑っていい場所なんだね…と、じわり胸が熱くなりました。

DRUM TAOの和太鼓演奏も大迫力で、重低音が響く中でのクライマックスの大立ち回りは、「マッドマックス怒りのデスロード」級の興奮が。
その後、幕切れへのなだれ込み方は一転して歌舞伎の様式美。

以前から様々な形で思い知らされていたことではありましたが、どんな新しいものを取り込んでもしっかり歌舞伎の世界にまとまってしまう、伝統芸ならではの懐の深さを再発見しました。
何だか、すごいモノの誕生に立ち会ってしまったぞ、という興奮と共に帰路についたのでした。

★8月27日(日)にNHK・BSプレミアムで放映があるそうです!全国の、たくさんの人達に観ていただきたかったのでこれは朗報!

2017年5月 6日 (土)

「バベルの塔」展

夫の職場は9連休、でも息子の幼稚園はカレンダー通り…ということで、遠出の旅に出るわけでもなく、のんびり過ごした今年のゴールデンウィーク。

お天気にも恵まれた憲法記念日は、家族で上野へ出かけました。

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夫と私のお目当ては、前売り券を買って楽しみにしていたブリューゲル「バベルの塔」展

上野駅は展覧会に併せてこれでもか、のバベル推し。飲食店の「バベル盛り」コラボ企画にも若干、そそられましたが、せっかくの五月晴れだったので上野公園でサンドイッチ等を広げました。
この時期ならでは、の気持ち良いランチで腹ごしらえの後、交代で息子の子守りをしながら東京都美術館へ。

当日は、公園の噴水広場前で「子どもブックフェスティバル」が開催中なのを事前にチェック済。本当に助かった(笑)
絵本作家の方々が直々に読み聞かせやおはなし会を開催しているコーナーもあり、息子は息子で存分に楽しんでいました。

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…当然、手ぶらでは帰れるはずもなく、新幹線の絵本を買わされることにはなりましたが…(交通新聞社のブースでは、電車の運転手さんの帽子をかぶれるサービスあり)

オランダのボイマンス美術館からやって来た、ブリューゲルや同時代の作品を観られる今回の展覧会。
ぶっ飛んだ奇想の版画に登場するモンスター(キモカワイイ、の元祖か?)たちが都美術館の回廊を彩っていました。

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一番左、「大きな魚は小さな魚を食う」という諺を元にした版画に登場する愛らしい魚人さんは、ゆるキャラ化して展覧会の公式マスコットとなっていました。

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…特に感想はないです

展覧会の主役である「バベルの塔」。

どれほどスケールの大きな構図(高さ推定500m超!)に、どれほどの情報(塔を取り巻く情景、建築機材や働く人々など)が詰め込まれているか…絵にまつわるたくさんの解説を目にした後で、やっと実物と対峙すると

「それだけのことを、こんな小さな絵の中でやってのけたの!?」

…と、ひたすらブリューゲルの凄まじい超絶技巧に感服するしかありませんでした。

近くに展示されていた、300%の拡大再現図との間を3往復したものの、目がチカチカして実物の細かすぎるディテールを捉えきれなかった、視力の衰えが情けなし。

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こちらは上野駅構内に展示してあった、東京大学レゴ部作成のレゴブロック製バベルの塔。

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2Dの絵画では不可能な「上からのぞき込んで見る」という楽しみ方も出来て、こちらも大変な見応えがありました。

天に届くほどの塔を作ろう、という人間の傲慢さに神が罰を下し、お互いの言葉を通じなくさせてしまったため、塔の建築は頓挫した…という、旧約聖書の物語がモチーフになっている「バベルの塔」。

でも、緻密な絵の世界にぐーっと入り込んで、石灰の粉まみれになり、重いレンガを巻き上げ機で運ぶ所業の一つひとつを見ていくと、ひたむきに目標に向けて頑張っている人々にむしろ愛着が湧いてきて。
これを、身の程知らずの傲慢だと断じて鉄槌を下すとは、神さまもなんと残酷な…と、そんな風に思えてきてなりませんでした。

さて、連休中のもう一つのお出かけイベントは、こどもの日に行った幕張メッセの「プラレール博」。

親子連れで大盛況の会場で、興奮のあまり制御不能になる息子を追い回すのにかなりのエネルギーを使いましたが、これでもか!と広げられつなげられたプラレールの膨大な量に圧倒されました。

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いずれにしても人の手ってすごい、ということを実感させられた日々でありました…

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タ〇ラトミーのマーケティングに次々と調略されている息子(涙)
他の子どもたちは静かに見ているキャラクターのプロモVTRの前で、延々ロボットになりきって謎のアクションを繰り返しておりました…親子で異世界に没入したG.W.であった(笑)

2017年2月22日 (水)

ティツィアーノとヴェネツィア派展

友達からの嬉しいお声がけで、久しぶりに上野の東京都美術館へ足を運んで来ました。

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お目当の展覧会は「ティツィアーノとヴェネツィア派展」。

鑑賞の前に、久しぶりの再会を祝して、美術館内のレストラン「IVORY」でランチを。
優雅な静けさと明るい清潔感のある空間で、ゆったりとおしゃべりも食事も楽しむことが出来ました。
メインに選んだ舌平目も、ブランチコースに追加オーダーしたデザートのモンブラン(レモン風味!)も、美味しいねえ…と二人してしみじみ、声に出さずにはいられませんでした(笑)

約1年ぶりの再会で、話は尽きることがなかったのですが、今日の目的を忘れちゃいけない、と展示室へ。

15~16世紀のヴェネツィアの円熟期に描かれた絵画の数々。
期間と地域を限定して、主題ごとに整理された展示内容だったので、同時代の画家たちの中でいかにティツィアーノの画力が群を抜いていたか…
「画家の王」と呼ばれるに至ったその凄さが、素人目にもよく伝わってきました。

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館内に掲示してあったのを読んだらとても充実した内容で、係の方にお願いして分けていただいたジュニアガイド。
「本来はお子様のみの配布ですが、部数に余裕がありますので…」とのコメント付でいただきました。

思えば、都美術館は去年春の若冲展を観に来て以来。
美術館前に出来た長蛇の列に、熱中症対策の給水所まで出来ていた状況を思い出すと、なんと今回は贅沢に絵と向きあえたことか(苦笑)

若冲展で思い出すこと。行列に並んでいた時に、近くで高齢の男性が体調を崩してしまったようで、館内から係の方が飛んで来るのを目にしました。

用意された車椅子で館内に移動していく際、私たちの横を通り過ぎたので、意識ははっきりしていた男性が

「連絡する家族はおりません。私は一人です」

と、大きな声で受け応えする声が否応なく耳に飛び込んできました。
私は一人です、というその言葉が、何だか胸に刺さってしまって、今でも記憶に残っています。

年を重ねた先に、それは私にも待っている行く末かも知れず。
きれいなものを観に来るのでもとにかく健康第一、体力一番なのだなぁ…と、妙にしみじみしてしまった出来事でした。(でも、美しいものと出会う感動はきっと、寿命を延ばしてくれそうに思います!)

2017年2月12日 (日)

二月文楽公演 曾根崎心中

昨年の今頃、毎週の放送を待ち焦がれて楽しみに見ていたNHKドラマ「ちかえもん」。

松尾スズキ演じる近松門左衛門の「曾根崎心中」誕生秘話…という名目で、元禄の世の登場人物が劇中で70年代フォークを歌う、という破天荒な演出。
そんなアホな、と笑わされていると、突然

「なんで皆、あないに息苦しい生き方せんならんのやろ…。己の生き方貫いてるようでいて、結局世の仕組みにがんじがらめにされとるだけや。」

と、時代物の芝居を楽しむ上で理解に欠かせない、封建制の価値観に縛られた当時の人々のしんどさがズバリ言い表されハッとしたり。色々な意味でたまらない面白さと深みがありました。
その後、芸術祭優秀賞や向田邦子賞などを受賞したのも納得です。

ただでさえ人気の高い演目が、ドラマ効果もあり、昨年の公演ではチケット瞬殺…
そしてこの2月公演は、国立劇場開場50周年記念で「近松名作集」の三部制。やっとやっと、念願かなってちかえもんの(違)曾根崎心中を生の舞台で観ることが出来ました。

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1等席の割にはかなり後方で、手代徳兵衛が心中の覚悟を確かめあうため、縁の下で遊女お初の素足を喉元に押し当てる、という有名なシーンは「足…あし?どこだ?」となってしまったのがちょっと残念…
視力の衰えを素直に自覚し、これからはオペラグラスを調達します…

文楽は、人形、太夫の浄瑠璃、三味線の三業が絡み合い、観る者を異界に誘ってくれる芸能ですが、今回は特に、死に場所と定めた天神森へ連れだって行く二人に重なる三味線の音色がドキドキ、胸の動悸を伴奏しているみたいに聴こえて、強烈な印象でした。

絶命の瞬間の一歩手前、徳兵衛がお初に刃をかざすところで幕切れとなりましたが、もう逃れようもなく定まってしまった二人の運命が切なく…

「死んで物言えん二人の思いを浄瑠璃で伝えて何が悪いんや!」

という、ドラマの中での近松の絶叫が脳裏によぎりました。

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Eテレ「ピタゴラスイッチ」の名物コーナーでも、最近お人形と若手人形遣いさん達が登場。ぐるぐるぐる、ぐるぐるぐる、と体操する姿、本当に愛らしいです!

2016年12月16日 (金)

十二月大歌舞伎 第三部

最低気温3℃と厳しく冷え込んだ金曜日。
クリスマスイルミネーションで、普段よりさらに華やかさを増した夜の銀座へ繰り出しました。

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6時を知らせる和光の時計も、冷たく冴えた空気の中でひときわ輝いて見える…
でも、これからもっともっと綺麗なものに会いに行くんだもんね、と目指すは歌舞伎座。

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今月の歌舞伎座は三部制で、新作あり時代物あり舞踊ありとバラエティ豊かなラインナップです。
舞踊の二本立てとなった夜の部は、愛しの玉三郎様出ずっぱり&滅多に舞台にかかることのない「京鹿子娘五人道成寺」が登場。
居ても立っても居られず、タガが外れて一等席を奮発してしまいました(笑)

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最初の演目「二人椀久」で、椀屋久兵衛を踊る中村勘九郎丈が花道に登場した時のうれしさといったら。

歌舞伎は、遠目に観ても十分に堪能できる、お安い席でもそれゆえの楽しみ方がちゃんと出来る芸能です。

でも、至近距離で衣装の細部や小道具をじっくりと観ると、帯の刺繍の質感なんて、それだけでも目が離せなくなりそう。
間近に俳優の表情を観察することで、何というか「…あぁ、この人たちって本当に人間なんだな…私と同じ人間なんだな…」と、当たり前すぎることを再確認してまたときめくという(笑)

「京鹿子娘道成寺」はこれまでも何度も観たことがありますが、五人で踊る道成寺というのはどんなことになるのか想像もつかず…

勘九郎、七之助の中村屋兄弟に、若手女形として躍進中の梅枝、児太郎を加え、それぞれがしっかりときっちりと、持ち場を見せ場にしていて。
本当に豪華で華やかな、レビューのようにワクワクさせてくれた1時間でした。

終盤の鐘入りでは、早変わりをサポートする裃後見のお弟子さんたちも五人分登場、ということで、文字通り舞台の上が盛りだくさん。目が二つじゃ足りないよ~という感じ(笑)

そして、一世代下の女形4名を従えて、やっぱり一人だけ色々な意味で次元が違う、坂東玉三郎という俳優の奇跡!
センターにいる人が、ちゃんと一番きれいで、ちゃんと一番巧いということ。当たり前のように求められるそのことを、生身の老いも疲れも抱えながら、背負い続けるというのはどれほどのことか。
この人と同時代に生きて、同じ劇場で時間をともに過ごせることのありがたさよ…と、いつも私は胸がいっぱいになってしまうのです。

今年は振り返ってみると6回、年の半分も歌舞伎座に足を運ぶことが出来ました。
歌舞伎はいつも、人間の力の素晴らしさを実感させてくれる。来年もたくさんの元気をもらいに劇場に行きたいと思います。

2016年12月 5日 (月)

十二月文楽公演 仮名手本忠臣蔵

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今月の国立劇場は、開場50周年の記念企画として、大劇場の歌舞伎と小劇場の文楽が同時に忠臣蔵を上演する趣向。

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過日の読売新聞でも大きく取り上げられていました。二代目襲名後、吉田玉男さんのお顔はますます人形の頭と相似形になりつつあるように思います…

ひょんなことからチケットが手に入り、夜の部を鑑賞してきました。4時半開演の八段目から始まり、9時半終演(!)というボリューム。
以前、歌舞伎の舞台で昼夜遠しで忠臣蔵を観劇したことがありますが、終わった時には自分も討ち入りを果たしたような達成感と、討ち入られたようなぐったり感を味わったものです(笑)

文楽で観る「仮名手本忠臣蔵」は初めてでしたが、いつものことながら命を吹き込まれた人形たちの熱演に胸を打たれました。
登場人物が多いので、人形遣いはもちろん、義太夫と三味線も大人数になる場が多く、声と音の競演にも賑々しい迫力が。
大曲中の大曲と言われる九段目「山科閑居の段」に挑む太夫からは、「命をかけて」とはこういうことか…と、客席のこちらも背筋が伸びるような真剣さが伝わってきました。

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舞台上の一人の登場人物を、かたちは人形、ことばは義太夫、思いは三味線の音色で造形していく文楽は、生身の人間以上に感情表現が増幅されるもの。
人生のやるせなさがてんこ盛りの「忠臣蔵」を通して、頭からつま先まで情念の芸に浸ってきた次第です。

劇場から足が遠のいた数年の間に、太夫や人形遣いの重鎮が相次いで引退されたり、亡くなられたり。
文楽の世界も切実に世代交代の潮目が…その過程を見守るべく、来年はもう少し劇場に足を運べたらいいなぁ。

帰路は、劇場の正面玄関前から都バスが出るサーヴィスのおかげで、スムーズに電車に乗ることが出来ました。車窓から見たクリスマスモードのイルミネーションに、現代の師走を感じた帰り道でした。

2016年11月20日 (日)

吉例顔見世大歌舞伎

実家支援業務と、役員として参加する幼稚園の行事があれこれと重なって、10月の終わりから11月はとにかく慌ただしく、気忙しく、落ち着かない毎日でした。

折悪しく、直前に感染性胃腸炎が大流行して、どうなることやら…と思われた幼稚園のお遊戯会も終わり、衣装係のお役目を何とか務め終え(息子の初舞台は袖から垣間見ただけでした・苦笑)…

自分の衣装係は全然苦にならない!とはりきって着物を着て、向かうは歌舞伎座。
着物がご縁でこの時にお知り合いになったさTんをお誘いし、中村芝翫襲名披露興行、二ケ月目の昼の部を観に行くことにしたのです。

意気揚々と最寄り駅から電車に乗り込み、週末の割に空いた車内で座席に腰を下ろし…

スマホ片手に時間をつぶすつもりが、やはり疲れが溜まっていたのか、自分でも気づかぬうちに睡魔に襲われていました。
イヤだ、いつの間にか寝ちゃってた…と我に返った目に飛び込んできたのが

目指す方向とまったく違う「恵比寿駅」の看板

乗り換えなければいけない駅をすっかり寝過ごしていたことを悟って、青くなったり赤くなったり。
しかし、時間は前にしか進みません(涙)

間抜けな大失敗のせいで、お待たせしたばかりか一幕目は結局観られず。
平謝りの私をやさしく、明るく慰めてくださるTさんの大人の器量が、かたじけなくてありがたくて。

観劇の前に心身ともに消耗しましたが(自業自得です)、それでもなお、舞台は充実の内容で、見ごたえ十分。
襲名披露興行ならではの華やかさに酔いしれることが出来ました。

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一幕目の終了間際に入った歌舞伎座のロビーで、貸切のような写真が撮れたのは怪我の功名?Tさん、お母さまから譲り受けたという色無地に帯が映えて素敵でした。

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私は細かい流水紋が全体に描かれた、ぼかし染の小紋に袋帯を合わせました。桟敷席の上の二階から、先月とはがらりと印象を変えた祝幕を眺めているところ。

「毛抜」に「加賀鳶」と、賑やかでユーモラスな演目が並んで肩の力を抜いて楽しめました。

そして何といっても、昼の部の一番のお楽しみだったのが、四人同時に襲名する芝翫父子の連獅子。

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4人で舞う連獅子というのはいったいどんな事になるものかしら、と楽しみにしていましたが、「祝勢揃壽連獅子」という題名どおり、舞台装置から間狂言の趣向まで、「お祝いですから普段より盛ってます」感、満載!
先代譲りの、芝翫丈の大きな長いお顔は、これぞ舞台人、というべき立派さ。
そして、ゴージャスなお膳立てに負けることなく、鍛錬を重ねてきたことがひしひしと伝わる仔獅子たちの舞に、拍手を贈りながら胸が熱くなりました。

とんだアクシデントを招いてしまったものの、最後は「楽しかった!」と心から言える一日になって、感謝の気持ちでいっぱいです。

2016年10月23日 (日)

十月大歌舞伎~八代目芝翫襲名

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過日、おかげさまで47歳の誕生日を迎えることが出来ました。
今年のお祝いは、夫が歌舞伎座の観劇をプレゼントしてくれることになり、八代目中村芝翫の襲名披露、夜の部を二人で観て来ました。

3人のご子息と、4名同時の襲名披露というのは歌舞伎座でも前例のないことだそうで、お祝いのポスター看板もフレームに収まりきりません(笑)

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大好きな帯に、この日初めて袖を通す小紋でお出かけしました。他にも何枚もお下がりをもらっている大伯母の遺品。
寸法は他と変わらないはずなのに、普段通りに着たつもりがおはしょりが重厚長大に…(そしてやり直す時間の余裕はなかった・涙)

襲名のおめでたい舞台に華を添える、賑やかな「外郎売」に続いて「口上」。

公演の直前に、不徳の致すところ(笑)で世間を少々騒がせた主役に向かい、「奥さんに叱られながら、これからも息子さん達を立派に育てて…」と笑いを取った菊五郎丈がさすがでした。

居並ぶ幹部俳優の中には、いつの間にこんなにお年を召して弱ってしまわれたのか、と胸を突かれる役者さんもいらっしゃいましたし、何よりも芝翫丈の実の兄であり、歌右衛門襲名が約束されていた中村福助丈が、療養中でこの場にいないことはどれほどの無念かと…

初々しい若い世代の口上を聞きながら、自らの天命、人生そのものを人々の目にさらけ出しながら生きる、俳優という生業の厳しさを考えさせられた時間でもありました。

今回、襲名された芝翫丈が、30年前に佐助役で出演したNHK「真田太平記」。水曜の夜に祖母と並んで、橋之助ってかっこいいよね!とドキドキしていた頃が懐かしいです。
時は流れて、熊谷陣屋の悲劇を演じ切る貫禄が備わったことに感慨が。

…とか言いつつ、実は一番のお目当ては、夜の部の締めくくりに坂東玉三郎サマが舞う「藤娘」でした!
暗転の闇から、フワッと明るく照らされた舞台一面に咲き誇る藤の花。その中央に立つ藤の精の美しさに、客席全体から「ああうれしいな、きれいだな」という無邪気なよろこびが、湯気のように立ち上っておりました。素晴らしかった。

さて、夜の部は上記のような演目でしたが、実は昼の部でもどうしても気になる演目があり、この日の数日前にダッシュで幕見席から見物してきました。

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4階からの眺めはこんな感じ…エッジの効いた感じの襲名祝い幕は、佐藤可士和さんデザインのものだそうです。

…それで、何が昼の部のお目当てだったかというと、幕開けの舞踊『初帆上成駒宝船』を作ったのが、大好きな画家の山口晃さんだというので、これは観ておかねば、と。

襲名記念品の扇子を依頼され、扇面に三兄弟の船出を描いて添えた詞書が元になって新作舞踊が作られたそうです。(舞台の様子はこちらに紹介されています)

画伯の絵が舞台装置になって歌舞伎座を彩るとは、生きていると本当に楽しいことがあるものだ、と感激でした!

話は戻って、夜の部鑑賞の帰路。
藤娘の余韻に酔う私の手元には、夫が買ってくれたこちらのお宝が。

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はい、件の成駒屋扇子です。襲名記念品コーナーで、手ぬぐいやマシュマロ(!)などと一緒に並んでいました。
制作は京都の宮脇賣扇庵さんでした。

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橋之助、福之助、歌之助の三兄弟(それぞれ顔の特徴がよく捉えられています)が威勢よく船出する姿。
詞書をよく読むと、三人はもちろん、芝翫丈や三田寛子さんの本名が巧みに織り込まれていて、確かに作調して踊りたくなる素晴らしさ。なんて幸せファミリーなんでしょう!

その幸せをくれぐれも大切に、今後も芸道に精進していただきたいと心から思う次第でありました。
(私もありがたみをかみしめて、この扇子は大事にしなければ)