2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

* link *


無料ブログはココログ

カテゴリー「文化・芸術」の記事

2017年5月 6日 (土)

「バベルの塔」展

夫の職場は9連休、でも息子の幼稚園はカレンダー通り…ということで、遠出の旅に出るわけでもなく、のんびり過ごした今年のゴールデンウィーク。

お天気にも恵まれた憲法記念日は、家族で上野へ出かけました。

170503ueno1
夫と私のお目当ては、前売り券を買って楽しみにしていたブリューゲル「バベルの塔」展

上野駅は展覧会に併せてこれでもか、のバベル推し。飲食店の「バベル盛り」コラボ企画にも若干、そそられましたが、せっかくの五月晴れだったので上野公園でサンドイッチ等を広げました。
この時期ならでは、の気持ち良いランチで腹ごしらえの後、交代で息子の子守りをしながら東京都美術館へ。

当日は、公園の噴水広場前で「子どもブックフェスティバル」が開催中なのを事前にチェック済。本当に助かった(笑)
絵本作家の方々が直々に読み聞かせやおはなし会を開催しているコーナーもあり、息子は息子で存分に楽しんでいました。

170503ueno
…当然、手ぶらでは帰れるはずもなく、新幹線の絵本を買わされることにはなりましたが…(交通新聞社のブースでは、電車の運転手さんの帽子をかぶれるサービスあり)

オランダのボイマンス美術館からやって来た、ブリューゲルや同時代の作品を観られる今回の展覧会。
ぶっ飛んだ奇想の版画に登場するモンスター(キモカワイイ、の元祖か?)たちが都美術館の回廊を彩っていました。

170503ueno4
一番左、「大きな魚は小さな魚を食う」という諺を元にした版画に登場する愛らしい魚人さんは、ゆるキャラ化して展覧会の公式マスコットとなっていました。

170503ueno5

…特に感想はないです

展覧会の主役である「バベルの塔」。

どれほどスケールの大きな構図(高さ推定500m超!)に、どれほどの情報(塔を取り巻く情景、建築機材や働く人々など)が詰め込まれているか…絵にまつわるたくさんの解説を目にした後で、やっと実物と対峙すると

「それだけのことを、こんな小さな絵の中でやってのけたの!?」

…と、ひたすらブリューゲルの凄まじい超絶技巧に感服するしかありませんでした。

近くに展示されていた、300%の拡大再現図との間を3往復したものの、目がチカチカして実物の細かすぎるディテールを捉えきれなかった、視力の衰えが情けなし。

170503ueno2
こちらは上野駅構内に展示してあった、東京大学レゴ部作成のレゴブロック製バベルの塔。

170503ueno3
2Dの絵画では不可能な「上からのぞき込んで見る」という楽しみ方も出来て、こちらも大変な見応えがありました。

天に届くほどの塔を作ろう、という人間の傲慢さに神が罰を下し、お互いの言葉を通じなくさせてしまったため、塔の建築は頓挫した…という、旧約聖書の物語がモチーフになっている「バベルの塔」。

でも、緻密な絵の世界にぐーっと入り込んで、石灰の粉まみれになり、重いレンガを巻き上げ機で運ぶ所業の一つひとつを見ていくと、ひたむきに目標に向けて頑張っている人々にむしろ愛着が湧いてきて。
これを、身の程知らずの傲慢だと断じて鉄槌を下すとは、神さまもなんと残酷な…と、そんな風に思えてきてなりませんでした。

さて、連休中のもう一つのお出かけイベントは、こどもの日に行った幕張メッセの「プラレール博」。

親子連れで大盛況の会場で、興奮のあまり制御不能になる息子を追い回すのにかなりのエネルギーを使いましたが、これでもか!と広げられつなげられたプラレールの膨大な量に圧倒されました。

Dsc_9014
いずれにしても人の手ってすごい、ということを実感させられた日々でありました…

Dsc_9006
タ〇ラトミーのマーケティングに次々と調略されている息子(涙)
他の子どもたちは静かに見ているキャラクターのプロモVTRの前で、延々ロボットになりきって謎のアクションを繰り返しておりました…親子で異世界に没入したG.W.であった(笑)

2017年2月22日 (水)

ティツィアーノとヴェネツィア派展

友達からの嬉しいお声がけで、久しぶりに上野の東京都美術館へ足を運んで来ました。

170222ueno1

お目当の展覧会は「ティツィアーノとヴェネツィア派展」。

鑑賞の前に、久しぶりの再会を祝して、美術館内のレストラン「IVORY」でランチを。
優雅な静けさと明るい清潔感のある空間で、ゆったりとおしゃべりも食事も楽しむことが出来ました。
メインに選んだ舌平目も、ブランチコースに追加オーダーしたデザートのモンブラン(レモン風味!)も、美味しいねえ…と二人してしみじみ、声に出さずにはいられませんでした(笑)

約1年ぶりの再会で、話は尽きることがなかったのですが、今日の目的を忘れちゃいけない、と展示室へ。

15~16世紀のヴェネツィアの円熟期に描かれた絵画の数々。
期間と地域を限定して、主題ごとに整理された展示内容だったので、同時代の画家たちの中でいかにティツィアーノの画力が群を抜いていたか…
「画家の王」と呼ばれるに至ったその凄さが、素人目にもよく伝わってきました。

170222ueno2
館内に掲示してあったのを読んだらとても充実した内容で、係の方にお願いして分けていただいたジュニアガイド。
「本来はお子様のみの配布ですが、部数に余裕がありますので…」とのコメント付でいただきました。

思えば、都美術館は去年春の若冲展を観に来て以来。
美術館前に出来た長蛇の列に、熱中症対策の給水所まで出来ていた状況を思い出すと、なんと今回は贅沢に絵と向きあえたことか(苦笑)

若冲展で思い出すこと。行列に並んでいた時に、近くで高齢の男性が体調を崩してしまったようで、館内から係の方が飛んで来るのを目にしました。

用意された車椅子で館内に移動していく際、私たちの横を通り過ぎたので、意識ははっきりしていた男性が

「連絡する家族はおりません。私は一人です」

と、大きな声で受け応えする声が否応なく耳に飛び込んできました。
私は一人です、というその言葉が、何だか胸に刺さってしまって、今でも記憶に残っています。

年を重ねた先に、それは私にも待っている行く末かも知れず。
きれいなものを観に来るのでもとにかく健康第一、体力一番なのだなぁ…と、妙にしみじみしてしまった出来事でした。(でも、美しいものと出会う感動はきっと、寿命を延ばしてくれそうに思います!)

2017年2月12日 (日)

二月文楽公演 曾根崎心中

昨年の今頃、毎週の放送を待ち焦がれて楽しみに見ていたNHKドラマ「ちかえもん」。

松尾スズキ演じる近松門左衛門の「曾根崎心中」誕生秘話…という名目で、元禄の世の登場人物が劇中で70年代フォークを歌う、という破天荒な演出。
そんなアホな、と笑わされていると、突然

「なんで皆、あないに息苦しい生き方せんならんのやろ…。己の生き方貫いてるようでいて、結局世の仕組みにがんじがらめにされとるだけや。」

と、時代物の芝居を楽しむ上で理解に欠かせない、封建制の価値観に縛られた当時の人々のしんどさがズバリ言い表されハッとしたり。色々な意味でたまらない面白さと深みがありました。
その後、芸術祭優秀賞や向田邦子賞などを受賞したのも納得です。

ただでさえ人気の高い演目が、ドラマ効果もあり、昨年の公演ではチケット瞬殺…
そしてこの2月公演は、国立劇場開場50周年記念で「近松名作集」の三部制。やっとやっと、念願かなってちかえもんの(違)曾根崎心中を生の舞台で観ることが出来ました。

170212bunraku1 170212bunraku2

1等席の割にはかなり後方で、手代徳兵衛が心中の覚悟を確かめあうため、縁の下で遊女お初の素足を喉元に押し当てる、という有名なシーンは「足…あし?どこだ?」となってしまったのがちょっと残念…
視力の衰えを素直に自覚し、これからはオペラグラスを調達します…

文楽は、人形、太夫の浄瑠璃、三味線の三業が絡み合い、観る者を異界に誘ってくれる芸能ですが、今回は特に、死に場所と定めた天神森へ連れだって行く二人に重なる三味線の音色がドキドキ、胸の動悸を伴奏しているみたいに聴こえて、強烈な印象でした。

絶命の瞬間の一歩手前、徳兵衛がお初に刃をかざすところで幕切れとなりましたが、もう逃れようもなく定まってしまった二人の運命が切なく…

「死んで物言えん二人の思いを浄瑠璃で伝えて何が悪いんや!」

という、ドラマの中での近松の絶叫が脳裏によぎりました。

170212bunraku3

Eテレ「ピタゴラスイッチ」の名物コーナーでも、最近お人形と若手人形遣いさん達が登場。ぐるぐるぐる、ぐるぐるぐる、と体操する姿、本当に愛らしいです!

2016年12月16日 (金)

十二月大歌舞伎 第三部

最低気温3℃と厳しく冷え込んだ金曜日。
クリスマスイルミネーションで、普段よりさらに華やかさを増した夜の銀座へ繰り出しました。

161216kabuki1
6時を知らせる和光の時計も、冷たく冴えた空気の中でひときわ輝いて見える…
でも、これからもっともっと綺麗なものに会いに行くんだもんね、と目指すは歌舞伎座。

161216kabuki2
今月の歌舞伎座は三部制で、新作あり時代物あり舞踊ありとバラエティ豊かなラインナップです。
舞踊の二本立てとなった夜の部は、愛しの玉三郎様出ずっぱり&滅多に舞台にかかることのない「京鹿子娘五人道成寺」が登場。
居ても立っても居られず、タガが外れて一等席を奮発してしまいました(笑)

161216kabuki3

最初の演目「二人椀久」で、椀屋久兵衛を踊る中村勘九郎丈が花道に登場した時のうれしさといったら。

歌舞伎は、遠目に観ても十分に堪能できる、お安い席でもそれゆえの楽しみ方がちゃんと出来る芸能です。

でも、至近距離で衣装の細部や小道具をじっくりと観ると、帯の刺繍の質感なんて、それだけでも目が離せなくなりそう。
間近に俳優の表情を観察することで、何というか「…あぁ、この人たちって本当に人間なんだな…私と同じ人間なんだな…」と、当たり前すぎることを再確認してまたときめくという(笑)

「京鹿子娘道成寺」はこれまでも何度も観たことがありますが、五人で踊る道成寺というのはどんなことになるのか想像もつかず…

勘九郎、七之助の中村屋兄弟に、若手女形として躍進中の梅枝、児太郎を加え、それぞれがしっかりときっちりと、持ち場を見せ場にしていて。
本当に豪華で華やかな、レビューのようにワクワクさせてくれた1時間でした。

終盤の鐘入りでは、早変わりをサポートする裃後見のお弟子さんたちも五人分登場、ということで、文字通り舞台の上が盛りだくさん。目が二つじゃ足りないよ~という感じ(笑)

そして、一世代下の女形4名を従えて、やっぱり一人だけ色々な意味で次元が違う、坂東玉三郎という俳優の奇跡!
センターにいる人が、ちゃんと一番きれいで、ちゃんと一番巧いということ。当たり前のように求められるそのことを、生身の老いも疲れも抱えながら、背負い続けるというのはどれほどのことか。
この人と同時代に生きて、同じ劇場で時間をともに過ごせることのありがたさよ…と、いつも私は胸がいっぱいになってしまうのです。

今年は振り返ってみると6回、年の半分も歌舞伎座に足を運ぶことが出来ました。
歌舞伎はいつも、人間の力の素晴らしさを実感させてくれる。来年もたくさんの元気をもらいに劇場に行きたいと思います。

2016年12月 5日 (月)

十二月文楽公演 仮名手本忠臣蔵

161205bunraku1
今月の国立劇場は、開場50周年の記念企画として、大劇場の歌舞伎と小劇場の文楽が同時に忠臣蔵を上演する趣向。

161205bunraku3
過日の読売新聞でも大きく取り上げられていました。二代目襲名後、吉田玉男さんのお顔はますます人形の頭と相似形になりつつあるように思います…

ひょんなことからチケットが手に入り、夜の部を鑑賞してきました。4時半開演の八段目から始まり、9時半終演(!)というボリューム。
以前、歌舞伎の舞台で昼夜遠しで忠臣蔵を観劇したことがありますが、終わった時には自分も討ち入りを果たしたような達成感と、討ち入られたようなぐったり感を味わったものです(笑)

文楽で観る「仮名手本忠臣蔵」は初めてでしたが、いつものことながら命を吹き込まれた人形たちの熱演に胸を打たれました。
登場人物が多いので、人形遣いはもちろん、義太夫と三味線も大人数になる場が多く、声と音の競演にも賑々しい迫力が。
大曲中の大曲と言われる九段目「山科閑居の段」に挑む太夫からは、「命をかけて」とはこういうことか…と、客席のこちらも背筋が伸びるような真剣さが伝わってきました。

161205bunraku2
舞台上の一人の登場人物を、かたちは人形、ことばは義太夫、思いは三味線の音色で造形していく文楽は、生身の人間以上に感情表現が増幅されるもの。
人生のやるせなさがてんこ盛りの「忠臣蔵」を通して、頭からつま先まで情念の芸に浸ってきた次第です。

劇場から足が遠のいた数年の間に、太夫や人形遣いの重鎮が相次いで引退されたり、亡くなられたり。
文楽の世界も切実に世代交代の潮目が…その過程を見守るべく、来年はもう少し劇場に足を運べたらいいなぁ。

帰路は、劇場の正面玄関前から都バスが出るサーヴィスのおかげで、スムーズに電車に乗ることが出来ました。車窓から見たクリスマスモードのイルミネーションに、現代の師走を感じた帰り道でした。

2016年11月20日 (日)

吉例顔見世大歌舞伎

実家支援業務と、役員として参加する幼稚園の行事があれこれと重なって、10月の終わりから11月はとにかく慌ただしく、気忙しく、落ち着かない毎日でした。

折悪しく、直前に感染性胃腸炎が大流行して、どうなることやら…と思われた幼稚園のお遊戯会も終わり、衣装係のお役目を何とか務め終え(息子の初舞台は袖から垣間見ただけでした・苦笑)…

自分の衣装係は全然苦にならない!とはりきって着物を着て、向かうは歌舞伎座。
着物がご縁でこの時にお知り合いになったさTんをお誘いし、中村芝翫襲名披露興行、二ケ月目の昼の部を観に行くことにしたのです。

意気揚々と最寄り駅から電車に乗り込み、週末の割に空いた車内で座席に腰を下ろし…

スマホ片手に時間をつぶすつもりが、やはり疲れが溜まっていたのか、自分でも気づかぬうちに睡魔に襲われていました。
イヤだ、いつの間にか寝ちゃってた…と我に返った目に飛び込んできたのが

目指す方向とまったく違う「恵比寿駅」の看板

乗り換えなければいけない駅をすっかり寝過ごしていたことを悟って、青くなったり赤くなったり。
しかし、時間は前にしか進みません(涙)

間抜けな大失敗のせいで、お待たせしたばかりか一幕目は結局観られず。
平謝りの私をやさしく、明るく慰めてくださるTさんの大人の器量が、かたじけなくてありがたくて。

観劇の前に心身ともに消耗しましたが(自業自得です)、それでもなお、舞台は充実の内容で、見ごたえ十分。
襲名披露興行ならではの華やかさに酔いしれることが出来ました。

161120kabukiza2
一幕目の終了間際に入った歌舞伎座のロビーで、貸切のような写真が撮れたのは怪我の功名?Tさん、お母さまから譲り受けたという色無地に帯が映えて素敵でした。

161120kabukiza1
私は細かい流水紋が全体に描かれた、ぼかし染の小紋に袋帯を合わせました。桟敷席の上の二階から、先月とはがらりと印象を変えた祝幕を眺めているところ。

「毛抜」に「加賀鳶」と、賑やかでユーモラスな演目が並んで肩の力を抜いて楽しめました。

そして何といっても、昼の部の一番のお楽しみだったのが、四人同時に襲名する芝翫父子の連獅子。

161120kabukiza3
4人で舞う連獅子というのはいったいどんな事になるものかしら、と楽しみにしていましたが、「祝勢揃壽連獅子」という題名どおり、舞台装置から間狂言の趣向まで、「お祝いですから普段より盛ってます」感、満載!
先代譲りの、芝翫丈の大きな長いお顔は、これぞ舞台人、というべき立派さ。
そして、ゴージャスなお膳立てに負けることなく、鍛錬を重ねてきたことがひしひしと伝わる仔獅子たちの舞に、拍手を贈りながら胸が熱くなりました。

とんだアクシデントを招いてしまったものの、最後は「楽しかった!」と心から言える一日になって、感謝の気持ちでいっぱいです。

2016年10月23日 (日)

十月大歌舞伎~八代目芝翫襲名

161023kabuki1
過日、おかげさまで47歳の誕生日を迎えることが出来ました。
今年のお祝いは、夫が歌舞伎座の観劇をプレゼントしてくれることになり、八代目中村芝翫の襲名披露、夜の部を二人で観て来ました。

3人のご子息と、4名同時の襲名披露というのは歌舞伎座でも前例のないことだそうで、お祝いのポスター看板もフレームに収まりきりません(笑)

161023kabuki2
大好きな帯に、この日初めて袖を通す小紋でお出かけしました。他にも何枚もお下がりをもらっている大伯母の遺品。
寸法は他と変わらないはずなのに、普段通りに着たつもりがおはしょりが重厚長大に…(そしてやり直す時間の余裕はなかった・涙)

襲名のおめでたい舞台に華を添える、賑やかな「外郎売」に続いて「口上」。

公演の直前に、不徳の致すところ(笑)で世間を少々騒がせた主役に向かい、「奥さんに叱られながら、これからも息子さん達を立派に育てて…」と笑いを取った菊五郎丈がさすがでした。

居並ぶ幹部俳優の中には、いつの間にこんなにお年を召して弱ってしまわれたのか、と胸を突かれる役者さんもいらっしゃいましたし、何よりも芝翫丈の実の兄であり、歌右衛門襲名が約束されていた中村福助丈が、療養中でこの場にいないことはどれほどの無念かと…

初々しい若い世代の口上を聞きながら、自らの天命、人生そのものを人々の目にさらけ出しながら生きる、俳優という生業の厳しさを考えさせられた時間でもありました。

今回、襲名された芝翫丈が、30年前に佐助役で出演したNHK「真田太平記」。水曜の夜に祖母と並んで、橋之助ってかっこいいよね!とドキドキしていた頃が懐かしいです。
時は流れて、熊谷陣屋の悲劇を演じ切る貫禄が備わったことに感慨が。

…とか言いつつ、実は一番のお目当ては、夜の部の締めくくりに坂東玉三郎サマが舞う「藤娘」でした!
暗転の闇から、フワッと明るく照らされた舞台一面に咲き誇る藤の花。その中央に立つ藤の精の美しさに、客席全体から「ああうれしいな、きれいだな」という無邪気なよろこびが、湯気のように立ち上っておりました。素晴らしかった。

さて、夜の部は上記のような演目でしたが、実は昼の部でもどうしても気になる演目があり、この日の数日前にダッシュで幕見席から見物してきました。

161023kabuki3
4階からの眺めはこんな感じ…エッジの効いた感じの襲名祝い幕は、佐藤可士和さんデザインのものだそうです。

…それで、何が昼の部のお目当てだったかというと、幕開けの舞踊『初帆上成駒宝船』を作ったのが、大好きな画家の山口晃さんだというので、これは観ておかねば、と。

襲名記念品の扇子を依頼され、扇面に三兄弟の船出を描いて添えた詞書が元になって新作舞踊が作られたそうです。(舞台の様子はこちらに紹介されています)

画伯の絵が舞台装置になって歌舞伎座を彩るとは、生きていると本当に楽しいことがあるものだ、と感激でした!

話は戻って、夜の部鑑賞の帰路。
藤娘の余韻に酔う私の手元には、夫が買ってくれたこちらのお宝が。

161023kabuki4
はい、件の成駒屋扇子です。襲名記念品コーナーで、手ぬぐいやマシュマロ(!)などと一緒に並んでいました。
制作は京都の宮脇賣扇庵さんでした。

161023kabuki5
橋之助、福之助、歌之助の三兄弟(それぞれ顔の特徴がよく捉えられています)が威勢よく船出する姿。
詞書をよく読むと、三人はもちろん、芝翫丈や三田寛子さんの本名が巧みに織り込まれていて、確かに作調して踊りたくなる素晴らしさ。なんて幸せファミリーなんでしょう!

その幸せをくれぐれも大切に、今後も芸道に精進していただきたいと心から思う次第でありました。
(私もありがたみをかみしめて、この扇子は大事にしなければ)

2016年9月18日 (日)

九月大歌舞伎~歌舞伎座タワー満喫

160918kabuki2_2
五月に歌舞伎を観に行った時のこと。イヤホンガイドの受付前で偶然、観劇に来られていたかつての勤務先の先輩と遭遇しました。
いつかは予定を合わせてご一緒しましょうね、というその時の約束が実現して、連休中日は「秀山祭九月大歌舞伎」を鑑賞に。

160918kabuki1
奇しくも当日が先輩のお誕生日ということで、歌舞伎座目の前のビルにある「和(なごみ)」の江戸前寿司でお祝いランチを。6Fから晴海通りを見下ろす席で、のんびりと近況報告にも花を咲かせました。意外なほど空いていて穴場かも…

いつ雨が降り出してもおかしくない空模様だったこともあり、食後は歌舞伎座タワーに直行。

元々、観劇前に5Fの「歌舞伎座ギャラリー」を見物する予定でしたが、エレベーターに乗りながら
「そういえばギャラリーのフロアに、歌舞伎の衣装で写真が撮れるところがあるんだよね?」
という話が不意に盛り上がり。

…約15分後、二人して花魁に扮装しカメラの前に立っていた私たち(笑)

160918kabuki3
こちらスタジオアリス歌舞伎座写真館、ピンからキリまで様々な扮装撮影のプランがあり、我々がチャレンジしたのが「お気軽時代扮装プラン」です。
着付は洋服の上から、メイクはなし(但し、花魁の衣装を着る人には赤い口紅をつけてもらえます)。
鬘の装着も含めて5分で準備完了です。小道具の長煙管を持たされ言われるがままハイ、ポーズ。

あっという間の変身体験でしたが、スタッフの方に
「こんなに目一杯楽しんでいただけたら、私たちもやり甲斐ありました」
と言われるほど、二人してテンション上がりました(笑)

160918kabuki4
次は、白塗り化粧と着付けで3時間かかるという最高峰のプランで歌舞伎衣装を着てみたいかも…と野望に燃える(笑)

しかし鬘というものがこんなにもどっしり重いとは!2ショットの写真を撮った時にはお互いの頭の大きさが把握できておらず、かんざしがぶつかり合ってカチャカチャいっておりました。
(動いているうちにどんどん鬘が後方にずり落ちてしまい、当初のプランより生え際が交代している私)

雰囲気だけでも重さを実感した後だけに、その後見て回った歌舞伎座ギャラリーの展示でも役者さん達の体力に思いを馳せてしまいました。

160918kabuki7
傾城の衣装。やっぱり本物は貸衣装とは雲泥の差(当たり前です)。
歌舞伎は3階や4階で観ることが圧倒的に多い私。舞台は遠目でも十分に楽しめますが、衣装のきらびやかな質感は間近で観るに限ります。迫力の手仕事を存分に味わいました。

160918kabuki5
ちなみに、「体験空間 歌舞伎にタッチ」というキャッチフレーズの展示空間では、実際に舞台で使われている小道具を触ったり、舞台を模したセットに入ることが出来ます。
せっかくの機会なのでお馬さんに乗ってみました。

160918kabuki6
御簾内では実際にお囃子の楽器を鳴らせるという贅沢さ。(直前に鬘を着けるためヘアネットでぎゅうぎゅうに押さえたので頭はいつも以上にボサボサです)

たくさん遊んで大満足、と、うっかり仕上がった気分になってしまいましたが、今日のメインイベントは夜の部の鑑賞です。
歌舞伎座タワー内の「寿月堂」で、濃厚な抹茶パフェをいただきながら一休み。カフェイン投入でスッキリと、階下の歌舞伎座へ向かいました。

160918kabuki8

先代の中村吉右衛門追善の「秀山祭」。夜の部の演目は

妹背山婦女庭訓 吉野川」
「らくだ」
「元禄花見踊」

「吉野川」は通常の花道に加え仮花道を作り、客席まで舞台の一部に取り込んで、川の両岸で繰り広げられる悲劇が演じられます。
今回は一等席だったので、花道を進む吉右衛門丈を間近に観られました。正直なところ、以前に比べ声量や台詞回しにややお疲れを感じずにはいられなかったのですが、全身から苦悩する主人公の辛さが漂ってくるようで、観ているこちらも冒頭から胸が詰まってしまいました。
義太夫狂言のご多分に漏れず、全員が我より他を重んじて、それが結局哀しい結末になるという…
現代の感覚から見れば「なんでそうなる?」と目が点になる悲劇ですが、玉三郎丈も風格を感じさせる熱演。
以前、文楽で観た時もハンカチが手放せませんでしたが、この日もお芝居の中にどっぷりと浸らせてもらいました。

打って変わって、最後の「元禄花見踊」では艶やかな装いで舞台中央からせり上がって登場した玉さま。
若手の役者を十何人も従えて、なお「ずば抜けて一番美しい」というのはすごいことだよね、と、終演後はしみじみ語りあってしまいました。

前後の食事も合わせて歌舞伎座の半径50m以内で過ごした半日でしたが、移動距離に反比例して充実した時間でした。

2016年9月10日 (土)

藤城清治影絵展

教文館のウェンライトホールで開催中の「藤城清治影絵展 光と影は幸せをよぶ」を観たくて、家族で銀座へ出かけてきました。

…が、その前にちょっと寄り道。
以前から興味津々だった、丸の内発着の観光バス「スカイバス東京」に乗ってみました。

160910ginza1_2
2階建てのバス、というだけですでに大興奮の息子。いくつかコースがある中で、今回は所要時間が50分と最短の「皇居・銀座・丸の内コース」を選択。

160910skybus
屋根なしオープンタイプのバスから眺める皇居や国会議事堂、何度も目にしている場所なのにはしゃいで撮影してしまうのはなぜ(笑)
慣れ親しんだプランタンの看板とはもうすぐお別れ。息子はJRの高架下をくぐるときが一番スリリングで印象に残ったようです。

とっても面白かったけれど、むき出しで空調のない中、息子を膝に乗せていた夫は暑さでぐったり。息子の背中も汗だくで、降車時に即お着替えとなりました。
次は季節を選んで(笑)ぜひまた乗ってみたいです。今度は水陸両用バスでもいいなぁ。

160910ginza2
その後、本来の目的地だった教文館へ移動。1Fのショーウィンドウも藤城さんの世界。
かつてはカエルグッズのコレクターだった私、カエルキャラクターの中でも一番好きなケロヨンを見つけて早くもテンションが上がりました。

160910ginza3
新作絵本の原画をはじめ、新旧の影絵作品がひしめく館内(写真撮影OKでした)は、まさに光と影で出来た夢の世界。
92歳の現在も、旺盛に創作活動を続けられていることは、子どもの頃からのファンとしてこの上ない喜びです。

影絵劇の進化形とでもいいましょうか、動物たちがコミカルに動くプロジェクションマッピングのコーナーに息子は釘づけで、何度も何度も繰り返し見ていました。

160910ginza4
贅沢なことに、自分で人形を操れるコーナーもありました。この細かい木の葉っぱが1枚1枚、カミソリで切り出されていることに改めて感服…

永年、愛らしいこびとや動物たちが遊ぶファンタジックな世界を影絵で表現してきた藤城さん。
近年は、東日本大震災の被災地をはじめとして、風景の写実的な表現に取り組まれるようになりました。
美しい自然、仏像や寺社、そして戦跡や被災地。それらを背景に、あのこびとたちがこちらを大きな目でのぞき込む様子は、平和と幸せへの願いを歌い上げるよう。
下書きの線や重ね合わせたセロファン紙の質感がわかるほど間近に作品を見られて、胸に迫るものがありました。

決してお安くはないのだけれど、やっぱりこの作品集をいつか手元に置きたい…

藤城清治の旅する影絵 日本

160910ginza5 160910ginza6

会場を出た後は、歩行者天国の片付けが始まるギリギリの時間まで散歩を楽しみました。三越のライオンは珍しくこんないでたちでした。

160910ginza7
夕食は夫の提案で、長崎料理の「吉宗」へ。茶碗蒸しと蒸し寿司の「夫婦蒸し」、久しぶりで美味しかった!
かまぼこ、茶碗蒸し、桜でんぶと大好物の揃い踏みで、息子も「おいしかった、またきたーい!」と、なぜか親ではなくお店の方にアピール。どうぞまたお越しください、と丁重にお答えいただき恐縮でした…

160910ginza8
激しい移り変わりはあっても、銀座はやっぱり心躍る街。充実の一日でした。

2016年8月20日 (土)

鼓童 創立35周年記念コンサート

160820kodo0
同級生の友人からお誘いをいただいて、サントリーホールで「鼓童 創立35周年記念コンサート」を鑑賞してきました。

160820kodo1
開演前の腹ごしらえは、ホールの向かいにあるオーバカナルにて。大きくてふわふわのチーズオムレツに、お代わりOKのバゲットが進んで困りました(笑)

松阪に住んでいた頃、近所の文化会館で公演があったのを観て以来の「鼓童」。芸術監督に坂東玉三郎が就任してからのステージは初体験です。

160820kodo2
玉三郎×ブルガリという共同企画で映画の鑑賞会が始まるんだそうです。会場で一際目立っていたお花。

三夜連続公演だった今回の記念コンサート。
私たちが観たのは、「第三夜~飛翔~」と名付けられた最終日。「BLUE TOKYO」「DAZZLE」という二組の男性ダンスグループとの共演でした。

S席は人気で取れなくて、360度ステージを客席が囲むサントリーホールならでは、真横から舞台を見下ろすA席になったのですが、これが思いのほか楽しめました。

いつもなら、客席からは大太鼓に正対する演者の背中が見えていて、その筋肉が躍動し、だんだん汗が光ってくる様子も音の迫力に凄みを加えているのですが、この日は太鼓にバチを振り下ろす横顔の表情をじっと見つめて聴くことになり、その真剣味に心打たれたのです。

ダンスパフォーマンスも、「飛翔」という名に恥じない躍動感で、限られたスペースでそんなに跳んではねて、落っこちない??とハラハラするくらい。
こちらの方は、さすがに時折(これはきっと、正面から見たらこういうかっこいいフォーメーションなのよね)と脳内補完する必要がありましたが(笑)

当日のステージの様子は鼓童のFacebookで紹介されています。

ラストは、空に向かって見えない大太鼓に演者がバチを振り下ろした瞬間、暗転。という、未来を暗示させるとてもかっこいい幕切れ。
再びスポットライトがついた時の客席の拍手は割れんばかりで、勢ぞろいした出演者たちと手拍子で一体になったカーテンコールは素晴らしい時間でした。

そんな興奮の中、スッと涼しい空気の色をまとわせて、
「あたしもちょっと入れてくれる?」
という感じで舞台袖から挨拶の列に入っていく玉三郎丈を、ほぼ真上からじっくり目で追えたのも眼福でありました。
(スーツ姿でも、やっぱりどこか人間離れしていた…)

160820kodo3 160820kodo4

サントリーホール内には35周年を記念した特別展示のコーナーも。変わることを恐れず進化することを選んだ鼓童、その歩みをこれからも観ていきたいと思いました。

ちなみに、この日出演していたBLUE TOKYOは、青森大の男子新体操部が母体になっているダンスグループなのだそうで。
「東京オリンピックの開会式は、これでいけばいいんじゃない?」と大盛り上がりだった私たち。二日後のリオ五輪閉会式で、東京プレゼンテーションに男子新体操チームが出て来た時はテレビの前で拍手喝さいでした!