今年で18回目を迎えた、荒川静香プロデュースのアイスショー「Friends on Ice」。かつては、高橋大輔や宇野昌磨といった選手の競技プログラムがいち早くお披露目されるのが楽しみだった、夏の終わりの一大イベント…とはいえ、現地に足を運ぶことはほとんどなく、いつもSNSのレビューや日テレの放映で満足していました。
それが、浅田真央の参加という、個人的にはオアシスの再結成並みに奇跡を感じるニュースに驚愕、10分後には初日マチネのチケットを押さえた私。
いまやメインキャストは一人を除いてプロスケーターばかり、荒川静香座長を筆頭に、真央ちゃんも大ちゃんもしょーま君も、それぞれが個性的なアイスショーを座長として創り上げている面々。
思えば、トリノ五輪後に荒川さんが引退した当時、興業として成り立つアイスショーといえば、メダリストが競演するスタイルの「招かれて滑る」ものばかりだった。今のように、スケーター主導で「滑って楽しい、観て楽しい」エンタメを創っていく形式に先鞭をつけたのは荒川さんの功績で、そのサクセションとして綺羅星のような「座長揃い踏み」が実現したのだと思います。フレンズの枠組みだからこそ並べられた宝石、でした。
真央ちゃんinを決断した荒川さんのプロデュース力にも脱帽だし、素直に受けてカンパニーの一員となった真央ちゃんも素敵。バンクーバー五輪のシーズン、大ちゃん真央ちゃんの2人がメダリストとして並び立つ姿にときめいていたオールドファンには、オープニングで座長と共に2人が登場し、バターの表面を滑らかに削るようなスケーティングを見せてくれた時点で、心が震えて、息をするのも忘れそうに…

村元哉中振付による圧巻のグループナンバー、あっちのお客様にもこっちのお客様にもアクセルとスパイラルちゃんとお見せしますね、な親切設計ソロナンバー。十分すぎるほどわかっていたけど、知ってたけど、真央ちゃん、本当にエンターテイナー。そしてスケートが巧い!
そして、プログラムの概要を文字情報で知っただけでも泣けてきてしまう、「オレにはわかる!」案件が頻出するのも、歴の長いスケオタに刺さる「フレンズ」ならでは。
ジェレミー・アボットの名プログラム「エクソジェネシス」を、高橋大輔、ジェイソン・ブラウン、三浦佳生とカルテットで滑るグループナンバーは鳥肌もの。ピンスポットに逆光で浮かび上がる大ちゃん、美しかった(大ちゃんに関しては、長いジレの裾やエッジの音まで演出に組み込んだセルフコレオのソロナンバーも最高、あっという間に終わっちゃうといういつもの難点以外は)
宇野昌磨くんの引退に伴い、「師弟」という関係性を卒業したステファン・ランビエールとのコラボも胸が熱くなりました。ステファンと昌磨くんのスピンの競演、最後にステファンの手で光の中へ滑り出して行く昌磨くん、笑顔で見送るステファン…この2人の出会いが、世界チャンピオンとそのコーチというキャリアに結実して本当に良かった、という思いを、満場のスタオベが表していたと思います。
ことほどさように、目の前で繰り広げられる華麗なスケートの奥に、スケーターの来し方という補助線を引いてより重層的な物語を感じる、雑にまとめれば「エモい」というしかない夢のような時間でした。
オープニングで、大ちゃんが3ルッツを軽やかに跳んで降りた時、不意を突かれて小さく叫んでしまったのですが、その声にお隣の方がパッとこちらを向かれ、お互い眼と眼で通じあって、万感の思いに深くうなづきあいました。
いろんなことがありましたよね、そして彼は今こういうスケーターになったんですね、それを見守っていける幸せを味わいつくしましょうね…
グランドフィナーレで、リフトを披露して「かなだい」を見せてくれた瞬間も含め、我が推しが輝いていることが本当に嬉しかったです。
台風10号の影響で交通機関の運休が多く、断念されたり通常の何倍もの労力でたどり着かれた方も少なからずいた今回のフレンズオンアイス、願わくばその方たちのためにも、来年もぜひ同じ顔ぶれで…!と、願っています。

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