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2019年9月 7日 (土)

高畑勲展 ―日本のアニメーションに遺したもの

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NHKの朝ドラ100作目「なつぞら」は、日本のアニメーションの黎明期に、レジェンドたちと共に仕事をした奥山玲子さんの半生がモチーフになっていました。

生み出す作品の魅力はもちろんですが…かつてスタジオジブリは(設立前の過程も含めて)、才能も個性も際立つクリエイターの群像劇の舞台として、考察して興味が尽きない対象でした。
あの人をこんな感じでこの俳優が演じるのか、あの逸話はここにこう持ってきたか!…と、ドラマそのものより、翻案の過程を楽しんでいたような半年。
アニメ関連の考証や製作に携わったのも、高畑・宮崎両氏の制作に深く関わった豪華メンバーで、事あるごとに「ぜ、贅沢!!」と唸っておりました。

そんな中。没後約1年、高畑勲監督の大規模な回顧展が開催されることを知って以来、会場に足を運ぶのを心待ちにしていました。
夏には、高畑・宮崎両監督を卓越した作画技術で支え続けた、近藤喜文さんの回顧展を三重県総合博物館にて鑑賞。

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世界名作劇場の枠の中でも一番好きな「赤毛のアン」のキャラクターデザインをしたのが近藤さん。オープニングの最後に出て来た、小鳥を手に乗せるアンの横顔の原画が見られて大感動!
三善晃作曲の、子ども相手に容赦はしないゴージャスなテーマ音楽に、「なんだか大人っぽい世界がここにある」と胸をときめかせていた、日曜日の夜の気持ちが甦りました。

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ご自身の監督としては「耳をすませば」ただ一作を遺して亡くなられた近藤さん。映画の中の街並みが撮影コーナーになっていました。

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さて、話は竹橋の東京国立近代美術館へ戻って。

「高畑勲展」会場に入ると、遺作となった「かぐや姫の物語」のパネル展示が目に入り、最晩年から年代をさかのぼっていく逆順の年表が目に入りました。

現実に起こったエピソードが凄まじすぎて、朝ドラ枠の「なつぞら」ではとてもじゃないけど、事実に忠実には描けなかったんだろうなあ…と思いながら視聴していましたが(モデルの奥山さんの産後復帰の闘いとか、ドラマでやったら逆にウソっぽいと言われそうな逆境)。
やっぱり「実録・東映動画労組」とか、がっつりドラマ化して後世に伝えてほしい気がする…

50年前に生まれた夫と私が物心つくはるか以前から、積み重ねられた偉大なキャリア。
運命が結んだ絆、としか言いようのない、日本アニメの神々たちの描いた絵、文字、そして実際のアニメーション画像…洪水のような情報量で、なんと4時間近くを鑑賞に費やしてしまいました。

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「アルプスの少女ハイジ」の、おんじの小屋と周辺の村が再現されたジオラマ。アルムのもみの木に囲まれて、ハイジとペーターはこんな急勾配を行ったり来たり駆けまわっていたんだなあ…

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ラクレットチーズを溶かしてパンに乗せたい!おじいさんと暮らした小屋の中も、こんな風に再現。モフモフのヨーゼフの背に埋もれたい誘惑にかられます。

「絵が生きているように動く」、当たり前のように目にしていたその事が、一つひとつ非凡な才能によって見出された技術によって生まれていたことを再確認した展覧会でした。
自覚できないほど深いところで、子どもの頃に本気で楽しませてもらった経験が、つまづいた時の自分を支えてくれることがある。
円が閉じるように再び「かぐや姫の物語」のラストシーンを再現して終わる会場を出ながら、胸に浮ぶ思いは「感謝」の一言でした。

そしてもう一点、とにかく心に残ったのが、1枚1枚の絵と同じくらいの熱量を伝えてくる、手で書かれた文字の迫力。
昭和40年代、心に思い描く理想、仲間と共有するアイデア、課題を形にするための試行錯誤…何もかもが、紙の上にペンを走らせて、一人ひとり違う字の形で残されている。

製作の遅れや予算超過に関し懲戒をちらつかせる、東映動画上層部からの念書さえ手書きに捺印(だからこそ何とも言えず怖い、そして高畑さんはどんな思いでこれを保管しておられたのか)。

はたらく「人間」の体温を、何十年もの歳月が流れたあとでも感じ取ることが出来る時代は、もう訪れることはないのかもしれない…そんなことも考えさせられました。

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