ミッドナイト・イン・パリ
ウディ・アレンがヨーロッパで映画を撮るようになってからの作品群は、美しい風景と軽妙な悲喜劇が同時に楽しめて、心に残る映画が多いです。
パリを舞台にしたこの作品も、冒頭に延々映し出される街並みの点描だけで、旅する時のようなワクワクする気分が盛り上がってきました。
憧れの地を訪れて有頂天になっている主人公に、さらなる奇跡が訪れて、なんと20年代のパリにタイムスリップする…そんな心躍るおとぎ話。
100年近い時空をいつの間にか超えてしまう…そんな不思議なことも、あの石畳の街角でなら、起こりうるような気がしました。
フィッツジェラルドやヘミングウェイ、ピカソなど、名だたるアーティストが次々に出現するのが楽しくて、主人公の驚きと興奮にこちらも同調してしまいます。
(ポスターやチラシに使われている↑この画像がとてもきれいなのですが、こういう場面は登場しません&ゴッホも出てこなかったと思う…ちょっとザンネン)
人間の俗っぽさや浅ましさに対するシニカルな描写は相変わらずで、思わずニヤニヤしてしまうところが随所に。
前フランス大統領夫人、カルラ・ブルーニがチラッと登場しますが、聡明な印象の美しさはモデル時代から変わらず、素敵でした。
面長好きな私がお気に入りのエイドリアン・ブロディが出演するのも楽しみだったのですが、あぁ、あの画家の役だったのね…と妙に納得&大ウケ(ネタバレはしないでおきます)!客席が一番爆笑したのも彼の登場シーンで、もはや「出オチ」の感も(笑)
「ここではないどこか」にいつも理想を求めて憧れる、そういう人間の普遍的な本性はどこか切ない。
けれど、憧れと現実の狭間で理想の居場所を探す主人公の、最後の選択にはちょっと救われました。
雨と夜の似合う街って、本当に素敵です。
*****
帰国後の私と入れ違いに、実家の母は同級生と古希を祝うパリ旅行へお出かけ中。
その準備のため、連絡を取り合うのにメールやネットを駆使するようになっていたのには驚きました。人間、いくつになってもヤル気さえあれば、新しいことを身につけられるのですね。
旅の主目的は在仏の友人を訪ねることだそうで、スーツケースの半分はリクエストされたお土産がギッシリ。
私も買い物に付き合いましたが、「そうめん30束、味の素のマヨネーズ3本、粉寒天、明太子スパゲティの素etc.」が詰まった母の荷物が、検査時にトラブルを引き起こさないことを願うばかりでした(笑)
ヨーロッパに暮らして日本のそうめんやマヨネーズが恋しくなるというのも、手に入り難いものほど魅力的に思える、人間の本性の現れでしょうか(ちょっとこじつけ?)。
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私もこの映画、見ました。
とてもおもしろい映画でしたね。今思い出してもワクワクします。
1920年代からさらにベル・エポックまで戻って、どこまで戻ってもきりがないことに気づく。
それでも過去の時代にあこがれる気持ちは衰えないんですね(ネタバレしちゃいました)。
日本で、「あの時代に戻りたい」と思えるような時代があるでしょうか?
やっぱりこれは、舞台がパリだから成立するお話かも。
サリィさんの映画評は点描風にポイントを抑えているのでイメージがわきます。
投稿: 1go1ex | 2012年6月15日 (金) 13時00分
>1go1exさん
肩の力を抜いて楽しめる、大人のファンタジーでしたよね。観光客目線で見る美しいパリがたくさん見られて。
それでいて、「どこまで遡っても人は過ぎた時代に憧れている」というくだりも、ロマンチックに濡れて歩くにはちょっと勢いが強すぎるラストシーンの雨も、ウディアレンのシニカルな視点がスパイスみたいに効いていて、クスッと笑ってしまいました。
投稿: サリィ | 2012年6月16日 (土) 11時34分