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2019年12月18日 (水)

本朝白雪姫譚話

令和元年を締め括る十二月の歌舞伎は、新橋演舞場の「風の谷のナウシカ」以下、国立劇場ではチャップリンの「街の灯」を翻案した「蝙蝠の安さん」の再演、そして歌舞伎座ではグリム童話「白雪姫」を題材にした「本朝白雪姫譚話(ほんちょうしらゆきひめものがたり)」と、多彩な意欲作がかかっていました。

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しかし、満員札止めの演舞場にひきかえ、歌舞伎座はまだまだチケットが取れるらしい…という話を耳にして、急遽予定をやり繰りし、白雪姫に会いに夜の部を観て来ました。

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少し早く到着したので、お隣の文明堂の喫茶室で、歌舞伎座を眺めながらコーヒーフロートで一服。

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花道は見切れちゃうけどせっかくなら近くで見たいよね、と、桟敷の上の三階席を取りました。客席の入りは七、八割という感じで、行列であきらめる事も多い「めでたい焼き」もすんなり購入。

夜の部は、平賀源内が「福内鬼外」というふざけたペンネームで書いた「神霊矢口渡」との二本立て。今月も女形の大役、阿古屋に挑戦している中村梅枝丈が、古式に則った芸を見事に勤めていて素晴らしかったです。

そして、玉三郎サマが演じる十六才の白雪姫がいよいよ登場!
…かと思ったら、このお芝居、ストーリーの主軸は、自らの美貌の衰えや、若く美しい実の娘を受容出来ない母親、野分の前の葛藤と狂気にありました。
野分の前を演じる中村児太郎丈(これまた昼から出ずっぱり)と、鏡の精を演じる海枝丈。近年、玉三郎丈から直々に芸を伝承する立場となった二人が丁寧に表現してみせる女心の妄執…からの、あまりにも清らかで無垢で可愛い白雪姫。

そもそもは俳優祭というイベントで、おふざけ込みで演じられていた歌舞伎版の白雪姫(私がテレビで見た時も、名だたる幹部俳優が七人、小人役で出て笑いを誘っていました)が、贅沢に琴や胡弓を使った音楽や、下女1人1人に至るまで手を抜かない豪華な衣装によって、クリスマスのゴージャスな気分にぴったりの美しいお芝居にブラッシュアップされていました。

七人の妖精を演じる子役さん達が、澄んだ声で歌うのは、なんとオペラ「魔笛」のアリア。ナウシカ歌舞伎で久石譲の映画音楽が流れた時も思いましたが、邦楽器で聞くとまた新鮮で、心に染み渡る音色がいつまでも耳に残ります。

ハイホーハイホー白雪さん、と歌声をリピートしながら、イルミネーションのきらめく街を帰りました。すっかり毎年の恒例になった、師走の玉三郎様との邂逅。来年にも期待です。

2019年12月14日 (土)

浅田真央サンクスツアー2019

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師走の気忙しさを頭から追い出して、家族を置いて1人、新幹線で名古屋に向かった土曜日。旅のお供のかまくらカスターと、アンソニー・ホロヴィッツの「カササギ殺人事件」(評判通り面白かった!)を堪能しつつ。

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親戚を訪ねて名古屋駅はよく利用しますが、子連れではなかなか立ち寄れない有名店で昼食。新幹線下りホームの、行列が出来る立ち食いきしめん「住吉」です。かき揚げが人気ですが牛肉きしめんをチョイス。お出汁の香りと味が最高でした。

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その後、地下鉄やらリニモやらをえっちらおっちら乗り継いで、長久手の「モリコロパーク」こと愛・地球博記念公園へ。目指すはアイススケート場で行なわれる「浅田真央サンクスツアー」。

引退後の真央ちゃんがセルフプロデュースして、「今まで応援してくれた人たちへ感謝の思いを届ける」という思いの下に続いているアイスショー。
驚くほどの低価格で、通常アイスショーなど滅多に開催されない地域のスケートリンクを回る、ゆえに都市部ではかえって観に行くのが難しいこのショーを、都合のつかなくなった友人から声をかけてもらって、ついに観に行けることになったのです。

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駅からデッキを延々歩いてスケートリンクが見えてきた時には、「会いに来れたよ、真央ちゃん…」と感涙…

会場のモリコロパークは、2005年に万博「愛・地球博」が開催されていた跡地。当時、三重県に住んでいたので3回も足を運んだのですが、もはやどこに何がどうあったかやら、すべてが記憶のかなたに霞んでいます。

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あ、あなたたちは健在だったのね、モリゾーとキッコロ…!!(でも若干、オリジナルの姿形から離れてしまっている気が)

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やがてはスタジオジブリのテーマパークが出来上がる予定。愛地球博の時に出来た「サツキとメイの家」は当時は大混雑で入場できず、今回も時間が合わなくて外から眺めました。

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そして始まったサンクスツアー。真央ちゃんが滑っていた試合やエキシビションのプログラムをアレンジして、本人や他のスケーター達が滑るショーナンバーが、ノンストップで繰り広げられる80分。

何度も繰り返し見て、もう音楽を聞くだけで真央ちゃんの振付が浮かんでくる名プログラムが、グループナンバーなどに生まれ変わっているのは新鮮でしたし、オリジナルの愛されポイントがとても尊重されているのが伝わってきて、リンクからとめどな溢れる「Thanks」を感じました。もちろん、観客席からも惜しみない声援と拍手が沸き起こり、感謝の思いが暖かく、熱く、冷たい氷上を飛び交う、幸せな空間でした。

このプログラムの時は故障で気の毒だった、このEXの年はジャンプでエラーを取られて…金メダルの夢を叶えられず…お母さんを亡くして…
走馬灯のように真央ちゃんの来し方が脳裏を巡り、事あるごとに涙が出てしまうショーの最終盤。
男性スケーターとソチ五輪のフリーを再現してみせたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、それはそれは素晴らしかった。ショートサイドの前方に座っていた私の目の前で、口元に笑みを浮かべながら軽く5連続タノジャンプを決めてくれた真央ちゃんは、何というかもう、後光が差して見えました。

日の当たる大通りだけを歩いているように見えながら、高みにいる人だけが知る苦しい道のりを乗り越えてきた人生。その真央ちゃんが、心の充実が伝わる笑顔でまだ、氷の上にいてくれている。良かった、よかったね、と泣き腫らした目でフィナーレの周回を見守ったのでした。

 

2019年12月 9日 (月)

新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」

あの「風の谷のナウシカ」が新作歌舞伎になる。それも、ポピュラーなアニメの方でなく、あの映画とはまったく異なる筋立てで展開される原作漫画の方を、昼夜通しの舞台で完全上演。

この企画を目にした時から、2019年の私の日々はある意味、師走の新橋演舞場を目指して営まれていたといっても過言ではなかった。
それほど、純粋にわくわく期待に胸をはずませておりました。
配役が発表され、ヴィジュアルが公開され、無事にチケットを確保することが出来て、あとは気力体力充分に、この身を劇場に運ぶだけ!と早寝の支度をしていたところへ…
飛び込んできた、ナウシカを演じる尾上菊之助丈の舞台上での怪我、そして夜の部休演のニュース。

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同行者と「明日、私達、どうなるの…?」と固唾をのんで情報を待っていましたが、その日のうちに上演の続行が発表されました。
すでにSNSで話題になっていた引幕のタペストリーを、実際に目にした時の感慨は、そんな経緯もあって本当に、胸に迫って言葉を失うほどのものでした…

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ただでさえギリギリまで初上演の演出を模索していたのが、アクシデントによる変更でどれほどの修正を余儀なくされたことか。
メーヴェの宙乗りをはじめ、見られなかった演出があった観客の私達以上に、何倍も何十倍も、「見せられたはずのものを見せられなくなった」舞台の上の人達の口惜しさを思い…
…それでも、この幕を開けてくれてありがとう、腐海へ連れてきてくれてありがとう、と、心からの感謝で拍手を送りました。

昼の部、幕開けの口上で、この日昼夜通して獅子奮迅の尾上右近丈が、アクシデントによる演出変更を詫びたのち、「役者は皆、命がけで舞台を勤めます」と客席を見わたした時の眼光の凄まじい強さ。
鬼気迫る緊張感の膜の中で火花の熱が散るような、名場面の数々と共に、ずっと忘れられないと思います。

公演が始まる前の菊之助丈のコメントに「試行錯誤の連続ではありましたが、古典の力を信じ、精一杯勤めます」という一文がありました。
私がゆるぎなくこの試みを待ちわびていたのも、まさに歌舞伎の力を信じていたからで、その信頼はまったく裏切られることがなかったどころか、想像をはるかに上回る豊かな時間を過させてもらいました。

壮大な異世界の表現に「こんなことも出来ます、こんな方法もあります…昔からね」と、いくつも抽斗を開けてみせられる、その底力に心地よく翻弄されて、この芝居の誕生の目撃者となれたわが身の幸せを嚙みしめました。

多くの人が言及していることですが、再演はもちろんのこと、仮名手本忠臣蔵がそうであるように、一場だけでも繰り返し上演される息の長い古典になっていってほしいです。宮崎駿が描いた「人間の度し難さ」は、時代が進んでも(悲しいことに)不変だと思うから。その場限り消えていく肉体の芸術に賭ける、歌舞伎役者の情熱も。

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夢だけど夢じゃなかった、証拠の品々は宝物。まだ販売が始まっていなかったブロマイドは、私の一週間後に観劇した夫に頼んで購入してもらいました。

2019年12月 1日 (日)

皇居乾通りと大嘗宮

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伊勢から仕事で訪れた従妹のリクエストで、「令和元年秋季皇居乾通り一般公開」ならびに「大嘗宮一般参観」に足を運んで参りました。

東京駅丸ノ内口から皇居を目指すと、まずは鮮やかに色づいた銀杏並木が目に入ります。

ぐるりと迂回して、坂下門に設けられた入場口で手荷物検査を受け、蓮池濠を横目に乾通りを歩きます。

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太田道灌が手がけた「道灌濠」をはじめ、石垣も門長屋も、皇居、というよりは「江戸城に私は今、立っている!」というタイムトラベル感にゾクゾクと興奮しました。
整い過ぎていない、付け焼き刃ではない自然の中で、空気も一味違うよう。歩いている間ずっと、様々な鳥の鳴き声が聞こえていたのが印象的で、本当に心地よかったです。

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例年の乾通りの一般公開は、まっすぐ乾門まで歩いてそのまま退出する形をとるようですが、途中、お堀にかかった橋を渡って本丸の方へ歩くと、過日、天皇陛下が大嘗祭で儀式を執り行われた大嘗宮が見えてきました。

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つわぶきの花が咲き乱れる林を抜けると、江戸時代に使われていたという石室(大奥のすぐそばにあり、氷室の役割を果たしていた模様)が突然現れ、ビックリ。

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主貴殿の側から真横に眺める大嘗宮。2週間前のテレビの映像を思い出しつつ、あのあたりを歩いていらしたのかしら…と、目をこらしました。

ここまで挙げた写真、あえて人影の写り込んでいないものを選びましたが、実際のところは…

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忍び寄るゾ〇ビのごとく、スマホを掲げる大勢の人々の影が地面に…

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駅から皇居前広場を通って現地に至るまで、ずっと大勢の人いきれの中を歩いて過しましたが、手荷物検査の時を含め、立ち止まって行列について待たされる、というような所は大嘗宮のほんの手前のあたりだけだったので、見るものすべて珍しい…という中、ストレスもなくあっという間の時間でした。

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これまで、お出かけ先として選択肢に入れたことのなかった皇居ですが、二の丸庭園や三の丸尚蔵館など、東御苑のエリアにももっとゆっくり見て回りたい場所がたくさんあることがわかり、四季折々の姿を楽しんでみたい、と思った令和の晩秋でした。

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